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第41話

  雑嚢の中には大切なシャツとズボンが入っている事を確認し、時計を見ると既に午後3時を回っていた。あまり時間はない。さて、誰に声を掛けようか・・・考えあぐねた末、やはり一度神社に戻ろうという結論に達した。

  再び神社に現れた良を見た正枝の驚き方があまりにも異常だったので、その理由を問いただすと、正吉が白山に呼ばれて出て行ったのだという。それだけなら何故正枝はこんなにうろたえるのだろう。そう思い更に問い詰めると、正吉は出て行く際隠し戸棚に厳重に保管されていた短銃を、自分に気付かれないように持ち出したらしいのだ。白山の呼び出し情を見てからの行動だから、きっとその手紙には何か良からぬ事が記載されていたに違いない、と正枝は泣き泣き付け加えた。白山宅までの道順を聞くと、良はわき目もふらず飛び出した。

  

  白山邸で案内を請うと、出てきた年配の婦人が自分は白山の妻だが、先ほど正吉さんが尋ねて来て2人揃って出かけた、と答えた。その時の様子に何か変わったことはなかったか、と聞くと、特に変わった様子はなかったが、言われてみれば出て行く際に正吉さんが“すみません。奥様。先生をこんなことに巻き込んで”といつになく神妙な面持ちで言っていた。今思い返すと変なことを言う正吉さんだな。と感じたとも言った。2人とも特にどこへ行くとは言わずに出かけたらしく、夫人も左程気に留めなかったとのことだった。矢継ぎ早にたたみかけた良の質問に段々と不安になってきたのか、夫人のミキ子は、

「何かあったのでしょうか?」

と聞き返してきた。

「いや、何でもないんです。それより奥さん。白山さんからの伝言です。なるべく早く北の海岸へ行くように。所持品は風呂敷に着替えを2〜3枚。なるべく急いで!それじゃ!」

良は正吉の言った“事の真相は闇に葬り、絶対島民に知らせてはならない”という意味がようやく飲み込めた気がした。ミキ子と話してみてそう感じたのである。だから理由も告げず、ただ白山からの伝言だと称して夫人を逃がすことにした。

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