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第39話

  正吉の口から白山との会話を聞いた良は、みすみす島の人達を見殺しにするのか!と正吉に食って掛かった。しかしパニックになった時、彼等に正吉達がなぶり殺しに遭うかもしれないという白山の言葉を聞くに及ぶとその怒りも急速に薄らいだ。

  「私は死ぬのは怖くない。怖いのはむしろその状態になった時の島の人達だ。昨夜、ああは言ったものの、果たして何名の人が脱出せず運命を共にするだろうか。捕虜になるなら自決もするだろう。しかし島が無くなるなどという絵空事のような話を一体何人の人が信じるだろう。しかも島が無くなる程の爆破実験をされるとわかったら・・・私はそれが恐ろしいのだよ。・・・真実は闇に葬り、私達の記憶からも消し去った方が良いのだ。とにかく絹代にはその真実ことを告げず、君1人の胸に収めここから一緒に逃げて欲しい。頼む!」

頼むと言われ、良は即答することができなかった。果たしてそれで良いのだろうか?・・・その迷いが顔に表れたのか、正吉が更に付け加えた。

「君が悩むことはない。これが今の世の中なのだ。敵国の情報を受けたと知れたら即、スパイの嫌疑がかけられる。そんな汚名を着てまで長生きはしたくない。むしろ潔く、木っ端微塵に吹き飛んだほうがマシだ。」

2人とも押し黙ったままそれぞれの思いを胸に数分間が過ぎた。

  その時ガラス窓が微かに動き、一片の紙切れが差し込まれた。正吉がそれに気付き窓を開けると、1人の兵士らしき男が走り去って行くのが見えた。その紙には短い英文がしたためられていた。それは良宛のビルからのメッセージだった。

『計画が変更になった。結構は明日。』

それだけで充分だった。実験が早まったので、早急に脱出しろちいう意味である。

「おじさん!」

「頼む!絹代を!」

2人の会話もそれで充分だった。即刻正吉は作業所へ絹代を呼びに行き、良は身の回りの品物を取りに離れに戻った。

  

  改めて部屋を見ると、感慨深いものがあった。ここに来てから2ヶ月余り。いくら物のない時代でも住めば何かしらモノは増える。その中で一番大切にしたいもの。正枝が良のためにと縫ってくれた上着とズボン。それを真っ先に雑嚢に入れた。当初着ていた洋服は擦り切れてしまったし、携帯は電池がなくなった上にどこで落としたのか全く覚えていなかったが紛失してしまったのでそのままにした。誰かが見つけてもこの時代では使い物にならないからだ。とのかく準備万端整った。あとは絹代の帰りを待つばかりだ。

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