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第22話

  「誰に聞いたんじゃ!黙っとると子供だからと容赦せんぞ!」

「し・知らねぇ!オレ、知らねぇ!」

既に何杯もバケツの水を掛けられびしょ濡れになりながら勝一は叫んだ。

「聞けばお前は変な男を拾ったというじゃないか。あいつは敵国のスパイなんじゃないのか!」

村長に良いところを見せようと必死の大島は特高並みに声を張り上げた。

「大島。そのくらいにしておけ。・・・いいか、勝一。さっきラジオ放送を聴いておったら昨日東京がB29の爆撃を受けて壊滅状態にあるそうなのじゃ。大島の話だとお前は数日前にその事を知っておったというじゃないか。悪いようにはせんからその話もう少し詳しく話しちゃくれんかの。お前が拾った男はどんな奴だ?」

柔和な顔付きでやんわりとした言い方とは裏腹に、蛇のような目つきでじっと見つめられ勝一の体がすくんだ。確かに良は変な男だ。おもちゃの箱を持っていて、これは電話だと言い張るし、8月に日本は負ける。東京も空襲に遭って被害を被る?言語道断!そんな事は日本国民にあるまじき言動だ。しかしそれでも勝一は良を売るようなことはできないと思った。一瞬でも友達だと思った人間を裏切るようなことはできなかった。増してその存在すら知られていないウイリアムの事を明かすことは絶対できない。そう自分に言い聞かせた。

  そのかたくなな表情に上村は大島に向かって顎をしゃくった。するとどこから出したのか、大島の右手には竹刀があり、勝一目がけて力の限り振り下ろした。

「ギャー!!」

村長宅一杯に響き渡るかと思われるほどの勝一の叫び声。

「大丈夫だ。ここは特殊な加工が施されている部屋だからな。お前の声は一切外には漏れないんだよ。フフフフ。」

含み笑いをする上村に、さすがの大島も冷水を浴びせられたように背筋に悪寒が走った。しかし今更後には引けない。引くわけにはいかなかった。

再び上村が顎をしゃくった。大島の手は機械的に竹刀を振るった。洋服の上からでも背中の皮膚が破け、血が滲んできたのがわかる。数発目には勝一の意識が遠のいた。それでも上村の責め苦はおさまらない。再びバケツの水を頭から浴びせた。一瞬勝一の意識は戻った。しかし大の大人でも耐えられそうにない拷問に、たかだか15歳の少年が耐えられる筈がない。それがわかると勝一をそのままに上村と大島は部屋を出た。そこは1つの部屋だと思われていたが、庭に建てられた土蔵だったのだ。

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