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第2話

  ピチャ。水滴が顔に当たり“冷たい。”と感じ目が覚めた。覚めたといっても辺りは薄暗い。しかしヒソヒソ話が聞こえるところからすると無人ではなさそうだ。

「あ!気が付いた。みんな!気が付いたよ!」

子供の声だ。するとガサガサと音がして周囲に人が集まってきた。

「良かったなぁ。」

皆口々に同じ事を言っている。

(何が良かったんだ!オレはパソコンを見ていたんだぞ!)

怒鳴りそうになったところで意識がはっきりしてきた。自分を覗き込んでいる人々の格好が変なのだ。大座布団のようなものを頭から被り、着ているものはツギハギだらけ。それもかなり汚れていて、おまけに身体からは異臭を放っているのだ。彼、笹崎 良は勢いよく起き上がった。途端に後頭部に鋭い痛みが走った。

「イッ!」

「さっき石にぶつけたんだよ。それにしてもどうしてあんなところに倒れていたの?B29が来たら大変だったのに。」

さっきの子供だ。・・・え? 今何て言った?B29?え?

「君!今B29って言った?」

「うん。聞こえない?あの音。さっき空襲警報がなったからみんな防空壕に逃げるところだったんだ。その途中でお兄さんを見つけたんだよ。それでみんなでこの中に運んだんだ。お兄さん、どこから来たの?名前は?」

「ぼうくうごう?くうしゅうけいほうだって?一体何の話だ?オレはドラマのロケ地に来ちまったのか?」

頭の中がグラグラする。オレはどうなっちまったんだ!

「お兄さんの言っている意味が分らないよ。頭をぶつけたせいでおかしくなったんじゃないの?」

「おかしくって?じゃ、一体今はいつで、ここはどこなんだ!」

「やっぱり変だよ。いい?今日は昭和20年3月1日でここは鼓島の防空壕だよ。」

頭巾を取ったその子は丸刈り頭の男の子だった。

「鼓島?え?昭和20年だってぇ!!君はオレをからかっているのか!オレはさっきまで東京の自分のアパートにいたんだぞ!」

「東京?お兄さん、東京から来たの?どうやって?今は船も通っていないんだよ。B29がしょっちゅう来るから危なくて漁船も出せないんだ。」

(オレは一体どうしちまったんだ。悪い夢でも見ているのか?鼓島のことを知りたくてパソコンを見ていたら急に変な感触が襲ってきて気がついたら60年も前の鼓島にいるなんて!)

すっかり混乱してしまった良は頭を抱えてしまった。それをどう勘違いしたのか少年は慰めるように言葉をかけた。

「お兄さん、頭を打ってどうにかなっちまったんだね?僕は佐々木 勝一。戦争に勝つようにって父さんがつけてくれたんだ。今は中学に通ってるんだ。と言っても戦争に勝つまでは学校よりも勤労奉仕の方が大事なんだ。兵隊さんが戦っているから僕らは陰で応援しなくちゃいけないんだ。大日本帝国は絶対連合軍になんか負けないぞ!」

勝一少年は突然立ち上がると“勝って来るぞと勇ましくぅ”と歌い出した。するとそれに呼応するかのように中にいた全員が少年の後に続けとばかりに合唱し始めた。頭が混乱している上に大合唱を聞かされた良は再び気を失った。

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