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第15話

  絹代の家に厄介になって2日目。良は綾子の事が気になり電話をかけた。プルルルプルルル。2度呼び出し音がなったところで聞き慣れた懐かしい声が聞こえてきた。しかしその第一声は、

「良ちゃん!今どこにいるの!ずっと電話かけ続けているのにどうして電源入れとかないの!」

いきなり怒鳴られた。

「電源?入れといたぞ。お前こそ何だ!全然連絡・・・あ、いや悪い。それより事情は帰ってから・・帰って? オレってもしかしたら・・帰れるのか?」

「何言ってんのよ!それより今どこにいるの!」

「あ?ああ。信じられないだろうが、オレは今60年前の鼓島にいる。突然タイムスリップしちまったらしいんだ。それより頼んでいた事調べてくれたか?」

「タイムスリップゥ?!私をからかっているの?いい加減にしてよね!早く帰って来てよ。みんな心配してるんだから!」

「帰りたくても帰れないんだ!それより早く鼓島の事を教えてくれ!」

突如“RYO”の文字が綾子の脳裏をよぎった。まさかそんな事が!半信半疑のまま綾子は手元近くに置いてあった日記を掻い摘んで読んだ。あの後3月11日以降の出来事に関する限り鼓島についての記載はなかった。但し、とんでもないことが起きて鼓島が消滅したと結果のみが書いてあるだけだった。それから“RYO”なる人物について少し記載があった。日本人らしいがとても流暢な英語を話し、今の時代とは異なる風体をしていた。長髪で着ている服も流行のもとのとはかなり違っている。何より驚いたのはその身長である。私は170CMそこそこだが彼は私よりも10CMは高いだろうと思われた。今の日本人は痩せて小さくいつも飢えている、というのが私の先入観だったが(実際キネヨ達はそうだった)“RYO”は全く違う。あれはきちんと食事を摂っている身体だ。とにかく全てにおいて不思議な男だった・・・・。

その箇所にくると良はとても興味を覚えたようで、ウイリアムには昨日会ったと言った。そして“RYO”というのはオレのことだ、と付け加えた。

  「何ですって!じゃ本当に今良ちゃんは60年前にいるの?そんな事ってあるの?こんなに近くに声が聞こえるのに?・・・」

最後は涙声になる綾子。元来彼女は気が優しく泣き虫だったのだ。

「泣くな!全く!どうしてお前って奴はすぐに泣くんだ!オレの方が泣きたい気分だってのに!いいか、この携帯も間もなく使えなくなる。だからこれが最後の連絡だと思ってよく聞くんだ。いつ戻れるか分らないからな。いいか、適当な理由をつけてオレの会社に退職願を出してくれ。それから・・帰ったら・・・」

そこで突然電話が切れた。

「良ちゃん?良ちゃん!どうしたの!ねぇ!」

通話口に向かって泣きながら綾子は叫んだ。再度短縮番号を押したが結果はいつも通りだった。

「良ちゃん。帰ったら?その後は何て言おうとしたの?」

まさかそんなはずはないと否定していた事が現実だったとは!綾子は電話握り締めたまま泣き崩れた。

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