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プロローグ

  それを初めて身体で感じたのは今から半年ほど前のことだった。

彼。笹崎 良は東京に住む28歳のごく普通のサラリーマン。ところがあることがきっかけで大変な経験をすることになるのだ。そのあることとは・・・

  今から半年前の九月の事。会社の同僚達とアフター5を楽しもうとある居酒屋で焼酎の水割りを2〜3杯飲んだところで突然頭の中が真っ白になり、手足が痺れ、耳鳴りがしてきた。酔ったわけではない。元来彼は田舎育ちということもあり、小さい頃から水代わりにどぶろくを飲まされていたため、酒には滅法強いのだ。

(なんなんだ。これは!)

周囲の物音が何一つ聞こえない。だが両目ははっきり彼等の行動を捉えている。

(一体なんなんだ!)

時間にすればほんの20〜30秒程度だったに違いない。次の瞬間突然周囲の音が聞こえだし、痺れも治まった。その時間が彼には何十分にも思えたが、同僚の会話には全く途切れたところがない。さっきの話の続きなのだ。

(何だったんだろう?)

そう思いつつ珍しく酔ったのか、と思い直しその夜は終わった。

その後しばらくはその奇妙な感じは現れなかったために彼はすっかりそのことを忘れていた。


  それから半年後の今宵、またそれを感じた。今回は前回のものよりも長く、更に悪いことには目の前が真っ暗になった。たとえ夜でも街中はライトが煌々(こうこう)と輝き、車のライトもある。完全に真っ暗になることなど有り得ないのだ。ところが帰宅途中の彼をまたあの感覚が襲ったのだ。と、その時、かすかに頭の中に響いてくる声がした。じっと耳を凝らすとそれは『助けて』と言っているようだった。それは何度も何度も言っていた。『誰だ!』彼は声に出して叫んだが、それは彼自身が思っただけで実際は頭の中で響いただけだった。しかし声の主には届いたらしく、

『早く来て!』

と返事が返ってきた。それに答えるように彼は続けた、

『どこへ来いと言ってるんだ!お前は一体誰なんだ!』

すると、

『鼓島。鼓島。』

2回程返答があってプツッと突然声は聞こえなくなった。同時に彼の身体は元通りになった。同様に帰宅途中のサラリーマンが不思議そうに彼の顔を見ていたので、長い時間突っ立ったままだたのだろうと推測できた。

「ああ、すみません。何でもないんです。」

そのサラリーマンに下手な言い訳をすると彼は一目散にアパートに帰った。


  着替えをするのもそこそこにすぐパソコンに向かい、“鼓島”という名前を検索した。少し間があったが、たった1件ヒットするものがあった。急いで開いてみた。

鼓島<つづみじま>   東京都下に属し、島の形が和楽器の鼓の形に似ているところから

            『鼓島』と呼ばれる。島の周囲150キロメートル。山と海に囲ま            れた人口200人程度の小さな島である。住民は漁業と農業を主に            生活の糧としており、殆ど自給自足の生活である。云々。

「東京都下?・・・へぇ。自給自足ねぇ。・・・・な、何だってぇ!!」

鼓島に関する記事を読んでいた彼は、最後の文章を見てひっくり返るほど驚いた。

            しかし今から約60年前、海底火山の爆発により島そのものが消滅

            現在はその正確な位置すら特定できない。

「島が消えた?な、何なんだ!じゃあれは・・・あの声は一体?」

その時パソコンのディスプレイがパッと強い光を放ち、彼の身体全体を包み込んだ。

次の瞬間、彼の身体そのものが消えていた。あとは何も変わらなかったような独身男の部屋があった。

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