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不思議パワーの確認

「固い」

「臭い」

「まずい」


 猫モドキの肉を焼いて、一口食べた途端に全員から文句が出た。


「肉食獣が固いとか臭いとかって本当なんだね」

「調理の仕方で随分変わるような気もするけど、ここじゃ焼くか煮るくらいしかできないし、調味料なしで煮るのはちょっとね」

「こいつを食料とみなすのはやめよう。骨と皮に期待」



「反省会をします」


 果実で口直しをした後で、三人はまたしても正座をしていた。


「餓死や凍死以外に積極的な命の危険があることを直視しましょう」

「このあたりの危険な動物があれだけとも思えないし」

「もっと危ないヤツがいるかもしれないしね」


 考え込む。


「ここから出ないってのは無理だから、できるだけ危険は避ける、無理なら戦って勝つ。結局これしかないよね」

「そうね。勝つためにどうしたら良いのかを考えましょう」

「……体を鍛える、武器をちゃんと使えるようになる、武器が簡単に壊れないようにする」

「あとは不思議パワーよ! 使いこなせれば相当なものになる筈よ!」

「そうだよな。姐さんの魔法がなかったら多分やられてた。リカさんの気もそうだよ。……俺のは何なんだろう? もうちょっと考えてみるよ」

「……じゃあ、今日は休日ということで各自自分が何をできるのか見つめ直す日にしましょう。夜には発表会、それと今後のことを話しましょう」



 夜になり、洞穴内に集合した三人。


「じゃあ、私からね。まずは魔法」


 タカコの前に球体が現れ、その場に浮かんだ。手に持った棒で球を突くとパァンという音と共に球は破裂し、棒の先端が割れた。


「どんどん行くよ」


 いくつも出現する球。次々に球を割るタカコ。球が割れると火が燃え、風が吹き、水が飛び散り、霧が立ち込める。


「とりあえず、この場でできるのはこのくらい。イメージ次第で色々なことができそう。まだ試してないけどね」

「何で球を?」

「魔力を込めるイメージのし易さ。何かの加工だと直接触って込めるからやり易いんだけど、何もないところに魔力を留めるって案外難しかった。できなくはないんだけど発散しちゃって非効率だったのよ。展開まで少し時間がかかるけど、効果は段違い」

「なるほどね。他には?」

「防具を作りました。まずはリカちゃんと私の胸を守るもの。……まあ、外からっていうよりも揺れないようにするために必要。このまま走り回って暴れてたらクーパー靭帯が切れて垂れちゃう」


 言いながら取り出したのは鹿モドキの皮を使ったハーフトップだった。


「服の上から着けてね。少しきつめにしてあるから苦しいかもしれないけど」

「良かったー。揺れると痛いしちょっと気になってたのよ」

「……揺れるおっぱいは浪漫なんだけどなー」

「垂れたおっぱいが好き?」

「いいえ」

「なら我慢ね」

「はい」


 オズが萎れた。


「次は目に見えるものじゃないんだけど、魔力を色々動かしてて分かったことがあるの」

「ほう」

「どんなこと?」

「集めるとそこがちょっと強化されるのよ。リカちゃんの『気』みたいな感じかな。で、眼に集めてみたらビックリ」

「どうなったの?」

「魔力が見えました!」

「え?」

「どういうこと?」

「私の魔力、リカちゃんの気、オズ君の不思議パワー、全部見えます。多分、全部同じものね」

「どんな風に見えるの?」

「体に靄がかかっている感じ。魔力が集まってるところは濃くなるの。で、見た感じでは私よりもリカちゃんの方がかなり濃いかな」

「俺は? 俺はどうなの?」

「オズ君はねえ……、濃過ぎて塊みたいになってる」

「は?」

「私の魔力もリカちゃんの気も靄が動いているんだけど、オズ君のはガチッと固まってて動いてないのよね。……推測なんだけど、多過ぎて目一杯になってるのかも」

「……」

「ホントだ……。気を眼に回したら見える。オズ君塊になってる」

「むう。どう反応したら良いのか分からん」



「次はあたしね。えーと、二つ目のチャクラを開放できたの!」

「……」

「……」

「何よ、その目は」

「いや、チャクラって言われても……」

「ねえ」

「ちょっと見てなさいよ。 タカコさん、ここに石作って! 墓石みたいの!」

「また罰当たりな表現を……」

「黙ってなさい!」

「こんな感じで良いかしら?」


 タカコが地面から幅二十センチ、厚み十五センチ、高さ一メートルほどの石を作り出す。底部は地面に繋がったままになっている。

 腰を落としたリカが右の掌を石にあて、目を閉じる。ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと吐く。再度息を吸い、止めたところで


「ハッ!」


 掛け声と共に石が根元から折れて倒れた。

 リカと石を交互に見る二人。得意気に鼻を鳴らすリカ。


「どう?」

「どう、と言われても」

「……何、今の?」

「発勁?」

「疑問系なの!?」

「本物の発勁がどんなのか良く分からないし。掌から気をドンと出す感じ」

「アバウトな言い方だなあ」

「別に良いでしょ。……後はこんなの」


 腰だめに構えた右手で正拳突きをすると、拳から青白い人魂のようなものが撃ち出され、倒れた石に当たり表面を砕く。左右の連打でどんどん砕かれていく。最後に両手を合わせてタメを作り、気合と共に押し出すと、今までよりも大きな人魂様のものが撃ち出されて石を粉砕した。


「あまり遠くには撃てないし疲れるから多用もできないけど、飛び道具」

「……波動拳だ」

「リカちゃんはどこに向かっているのかしら……」



「んじゃ、俺。テーマは『改造人間』」

「何よ、テーマって」

「いや、魔法とか気とかさ、ぱっと聞いてイメージできるじゃん。でも、俺のは分かり難いからキャッチフレーズのようなものをね」

「で、それが改造人間?」

「そ、身体の失われた部分を機器で補う。正に改造人間またはサイボーグ。でね、改造人間と言えば、まずは頑丈。……姐さん、さっきの石、もう一回作って。高さは二メートル」

「はいはい……できたわよ」

「まずはこっちの義手」


 言いながら石に義手でパンチを打つと硬質な音と共に表面が軽く剥がれる。


「続いてこっち」


 同じように左手で殴ると同じような音がして更に表面が剥がれる。同様に右脚、左脚で石を蹴る。どちらも硬い音が鳴り、傷むのは石だけ。


「ちょっと、大丈夫なの?」

「問題なし。硬くなるのは義手や義足だけじゃなかった。全身が硬化しているから獣くらいなら盾になれそう。続いてレーザー」


 表面がかなり傷んだ石に義手の指先を向けると、指先が光を発し、石から煙が立ち上った。


「何したの?」

「義手の指からレーザー発射。石を見てよ。穴が開いてるから」


 リカが近寄ってみると、確かに親指の先くらいの大きさの貫通穴が開いており、その穴から煙が出ている。


「どんな理屈なのよ?」

「そんなの知らないよ。指から弾を出すのは基本じゃん。でも、弾をどうやって作ったらいいのか分からなかったからレーザーっぽくしてみた」

「オズ君、もう一度撃ってみて」

「はいよー」


 タカコのリクエストに軽く応えて再度指先を光らせる。


「今見た感じだと、魔力を高熱の光にして撃ち出してるみたい。光にしては遅いのはオズ君の『レーザーってこんなもの』って言う思い込みがそのまま表現されているんじゃないかしら」

「思い込みって……」

「見えないと何してるのか分からないし、この方が格好良いじゃん。……最後にこれ」


 義手のベルトを外し、石に向かって真っ直ぐ伸ばす。義手が飛び出し石を打ち抜く。


「ロケットパンチ」

「……人間辞めてるわね」

「改造人間ですから」

「これで、基本的な作戦は立てられそうね。まず、敵を発見したらオズ君のレーザーとタカコさんの魔法で遠距離攻撃。近寄られたらオズ君が敵の攻撃を捌いている間にあたしが叩く。タカコさんは魔法で援護と牽制ってとこね。……タカコさん、怪我は治せないのかな?」

「んー、まだ誰も怪我してないから分からないわ。できそうな気もするけど」

「今度適当な動物でも捕まえて実験しよう」

「動物保護団体から訴えられそうだ」

「そんなのどうでも良いわよ。こっちは命懸けなのよ」

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