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プロローグ

「あはは、またやってるよw」程度に見てやってくだされ。

「ありがとうございましたぁ♪」

「お〜ぅ、また来るからよぉ・・・ひっく。」

べろんべろんに酔っ払ったお客さんを店の入り口、この場合、出口だけど・・・までお見送りする。

「美樹ちゃんも、またなぁ。今度呑みに行こうぜ。」

美樹ちゃんはうちの一番人気の娘だ。愛想も良いし可愛い。

「あらあら、お持ち帰りはダメよ?美樹はアタシのなんだから♪」

「あれ?ママ、ヤキモチ?」

「やぁね、そんなこと・・・・あるわよ?」

「やべぇ、ママとフラグ建ったかも?この後、朝まで・・・どう?」

「あら?社長さん、筋肉フェチだっけ?」

「そうじゃねぇけど、ママとなら新しい世界に目覚めてもいいかなぁ?なんて。」

社交辞令だって事はわかってる。アタシみたいなぶちゃいくなオカマ、普通は相手にされない。

「あら、どうしようかしら♪奥さんにバレても知らないわよ?」

「あははは、それは勘弁、また来るからよ、んじゃぁなぁ。」

「はい、おやすみなさい♪」

ようやく最後のお客が帰った。

時間はもう朝の5時。

早起きな人はすでに仕事に向かってたりする時間かしら?

「美樹ちゃん、お疲れ様。今日はもうあがっていいわよ?」

「はーい、ママもあんまり遅くまで頑張らないで、ちゃんと休んで下さいね?」

「うん、ありがと♪おつかれさま♪」

「おつかれさまでしたぁ♪」

そう言って手早く荷物をまとめ、タイムカードを押して美樹ちゃんが帰って行った。

静まり返った店内。

BAR「もんすたーはうす」。

まぁ、よくある普通のオカマBAR。

アタシはここのママで源氏名は「マリア」

人には良く「聖母マリアを30発位ぶん殴ってあまりの痛みに我を忘れた時の様な顔」と言われる。

そんな褒めても何も出ないわよ?

まぁ、そんな訳で・・・オカマBAR自体が普通かどうかはまぁ、置いといて。

家族の突然の事故死。

その親の借金とかが結構あって普通の営業職だったアタシにはとてもじゃないけど返せる見込みがない金額だった。

アタシの営業成績はお世辞にも良いとは言えなかった。

毎月ノルマを達成できず、上司には散々嫌味を言われたし給料も一向に増えなかった。

そんな営業に見切りをつけて少しでも稼ごうと昼間は工事現場ではたらきつつ、夜はオカマBAR。

20代後半でこの業界に飛び込んでなりふり構わず働いた。

それこそ、身体を売るような真似もした。

こんなぶちゃいくでもマニア受けするからかそれなりにお客がついた。

おかげで借金はあらかた片付いてこれからは趣味とかにお金を使おうかな?なんて考えてた。

アタシの恋愛対象は基本、オトコ。

子供の頃からずっと。

おかげでばれた時には変態扱いされた。

学生時代はそれを理由に引きこもってた時期もある。

今はもう開き直ってるし気にして無い・・・・と言えば嘘になるけど

一生一人でいる覚悟が出来た時には気にならなくなっていた。


「ぐびっ・・・・ごくごくごく・・・ぷはぁぁ♪」

とりあえずは仕事明けの一杯、アルコール度数20%とちょっとおかしいくらい高めの・・・怪しげなブランドの缶チューハイをあおる。

お店に出すのはちょっと高めのブランデーとかなんだけど、アタシ個人はこの安っぽい缶チューハイがお気に入りだったりする。

今日の仕事がおわり、この後は売り上げ数えて、軽く明日の仕込み、それと食材の買い出しをしながら帰るだけ。

あっと、忘れちゃいけない。今日は彼氏がこの後くるんだったわ。

「迎えに行くから。」

そう言ってたのでこの後はデートね。

買い出しは今晩の出勤前でいいかしら?

ん?彼氏?すんごいイケメンよ?

なんでアタシみたいな筋肉達磨の彼氏なのかアタシも未だに信じられない。

アタシの容姿はお世辞にも美しいとは言えない。

まぁ、筋肉フェチな人なら・・・それでも壊滅的に顔が怖い。

泣く子もさらに泣く、恐怖のあまり呼吸困難を起こす位よ?

そんなアタシに一言、

「君が欲しい。僕には君が必要なんだ!」

そういってくれた。

最初は騙されてる?新手の詐欺?なんて思ったんだけど

あまりに熱烈なラブコールについにアタシも折れたって訳。

でも、良いのかしら・・・世間的にこんなぶちゃいくなオカマと一緒になるって、世間体とか色々問題ありそうなんだけど。

「もう直ぐ僕は戻らなくちゃいけないんだけど・・・迎えに行くから、一緒に僕の所に来て欲しい。」

凄く真剣な顔で言われてドキドキしながら一言だけ「はい♪」と答えてしまった。

そんな訳でアタシ、もう直ぐ結婚?な為にお店を離れる事になっている。

アタシの抜けた後は器量好しの美樹ちゃんをママに指名してある。

あの娘ならこのお店も安泰ね。

丁度、缶チューハイ2本目で良い感じに酔いが回ってきたところで入り口のドアが開く。

「やぁ、迎えに来たよ。」

うぉぉぉ、白い歯がキラリ、やゔぁいくらいに爽やかに入ってきたわ。

「まってたわ♪」

そういって彼をむかえる。

彼は扉を開けた勢いのまま抱きしめてきた。

あぁぁ、アタシ、シアワセの絶頂かも?

そのまま口付けを・・・・すこしながめにかわし、正面から見つめ合う。

あぁぁ、瞳に吸い込まれそう・・・

「よし、行こうか。」

そう言って手首を掴んで歩き出す。

この積極性にやられちゃったのよね、アタシ。

手を引かれ店の外に出る。

あ、チャット待って、ちゃんと戸締りしないと!!

なんて思ってたら視界がブラックアウトした。

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