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虚構仕掛けのユートピア 〜void incarnaters〜  作者: Noyory
2章 wanderers〈ワンダラーズ〉―徘徊する者達―
6/16

2―2 wanderers ―赤い錯綜―

―1―






 時刻は深夜。


 上座パラメントシティは闇に沈んでいた。

 救助活動は完了したとの発表が為されたものの、シティ内の照明関連の設備はすべて使用不可能なままである。作業員もいなくなり、無人のパラメントシティの占める広大な空間は、夜の間ぽっかりと大きな穴が空いてしまったかのようだった。


 今はこっちより、中央区で起きた火災の方で忙しいらしい。さっきから救急車と消防車が何台も通りすぎていく。


 三城威織(ミキ・イオリ)はその光景を、客の1人もいない喫茶店の中からかなり長い間眺めていた。威織はある男からの呼び出しに応じ、ここで待ちぼうけている。


「すいませんおかわり」

 にこやかな初老の店主が、威織に今日3杯目のクリームソーダを持ってきてくれた。かれこれ1時間ほど、この人の良さそうな店主は自分専属のウェイタと化している。深夜とはいえこんなことで採算がとれるのだろうか。そんな余計な心配をするほどに威織は待ちくたびれていた。


「なんでそんな物を飲んでる」

 いつの間に入店したのか、手前の席に見知らぬ白髪の男が座った。

 威織は待ち合わせの相手、橘直陰(タチバナ・ナオカゲ)の顔を初めて見た。


「久しぶりに見たから飲みたくなったんだよ。その前に俺に謝ることがないすか直陰さん?」

「お前に名前で呼ばれる筋合いはない」橘は煙草を出しながら的はずれの反論で返す。

「つーかなにその頭。バンドの人?」「お前は頭を爆破でもされたのか?」

 橘は煙を吐き出し、威織を睨みながら応答する。橘はこっちの質問に答える気は一切無い、そう眼で語っていた。威織はお気に入りのヘアスタイルを貶され、ちょっと苛ついた。


 …めんどくさいタイプだな、コイツ。


 そう思った威織は渋々先に折れる。

「まあ、いいや。で、聞きたいことって?」

 橘は煙草を揉み消す。まだ半分も吸っていない。


「創介、真琴、この二人とはいつから知り合いだ?」

「は?」


 予想外の質問。威織はてっきり自分の妙な能力に関することだとヤマを張っていたのだ。何故なら自分と橘の共通点などそれ以外にない、そう思い込んでいたのだ。


 …しかし、なるほど。今言われて気付いたが、この男と自分にはもうひとつ共通点があった。


 つまり、真琴と創介だ。


「あー…でも、いつからってマコちゃんとは小学校から親友だし…。てか、それがあんたに何の関係があんの?」

「創介とはいつから?」

 橘は先を促す。イオリの嘆息。

「葵さんとは…中学の時、か。最悪の出会いだったな、今考えりゃ」


 思い出すのは、当時の創介の“眼”だ。


「今も行動を共にする理由は?」橘は早くも2本目を取り出す。威織を睨み付けたまま。


 威織は勢いよく机に両足を載せた。

 クリームソーダは零れて無くなってしまった。


「いい加減にしろ白髪。こっちに答える義務はねえ、これ以上質問すんならワケを言いな」


「いいから答えろ、〈白のロボス〉の三城威織」

「あ?」2本目に火を付ける橘。


「今までの話から行くと、かなり以前からの付き合いで、あいつらの“昔”を知ってるってことだな。ギャングのリーダのお前が」橘は質問を続ける。

「お前、俺の事調べたのか?」

 本当にめんどくさい奴だ。そして回りくどい。

「ずいぶん無駄なことするんだな。聞けば教えてやったのに」

「知らなきゃな、そもそも質問を思い付かないんだよ」


 …ああ、確かに。威織は数秒間考えて意味を理解した。

 そして2人の過去と今の自分、その言葉(ピース)でた橘の質問の意図が直感的に理解できた。


「もしかして、俺が二人をロボス(ウチ)に誘ってるって思ってる?」

「違うか?」「違うね」


 即座に否定した威織に対して、今度は橘が黙った。


「2人は親友だ。ただのな。たとえ“過去”に何があろうと、そんなのはなんの関係もない」


 威織は足を下ろし、落ちたグラスを拾った。横で後始末をしていた店主にグラスを渡す。

「すんませんした」

 店主は笑顔のままグラスを受け取り、カウンタに帰っていった。

「…つまり、本当にただの、昔からの知り合い?」

「ただのじゃねえ、大事な親友だ。生涯の友だ。ベストフレンドだよ」

「お前が最初にただのって言ったんだろうが」

「うるせえ、揚げ足取るんじゃねえよ。じゃ聞くがな、あんたは何なんだよ、偉そうに親みたいなこと聞きやがって」


「俺は、あの2人の保護者だ」


 今度はイオリが固まる。


「…え、でも創介さんはもうハタチ過ぎてるぞ?」

「今はな。でも真琴はまだ未成年だ」橘はようやく眼から力を抜き、客席に背を預ける。


「保護者ってのはな、面倒だが一度なっちまうと一生保護者なんだよ」

 そう言って、2本目の煙草を消した。よく分からないが、どうもこの白髪頭の懸念は解消されたらしい。


「…なんだよ。ただの親バカ気取りかよ。なに、たったそれだけのことでこんな夜中に呼び出されたワケ?」


「それだけって訳でもない。お前にも会っておきたかったしな。なあ、反逆技巧(リボルバー・トリック)の、三城威織」


 威織は上手く聞き取り損ねた。聞いたことのない横文字が、頭に上手く入ってこなかった。


「今なんて言った?」

 そう聞いた威織に向けた橘の目は、困ったような、面白がるような不安定な表現を表していた。それは初めて威織に向けた、睨み以外の感情の籠った視線だった。


「きっとこれから大変だぞ。俺達、全員」


 橘の言う全員に、一体どこの誰までが含まれるのか、その時の威織には分からなかった。






―2―






 2度目の〈光災〉から8日目の朝。


 背原真綾(ハイバラ・マアヤ)は寝坊して兄に起こされた。


 目を開けるとすぐ近くに兄の顔があった。その時の衝撃と恥ずかしさはとても言葉にできるものではなかった。


 しかしそのお陰で真綾の眠気は遥か彼方へと消え失せ、何とか遅刻を回避できた。その間、昨夜のことも考なくて済んだ。



 真琴についての新たな3つの発見。


 1つ目。真琴は朝食を摂らないこと。

 真琴は毎朝かなり余裕があるようで不思議に思っていたが、兄は朝何も食べない習慣のようだ。というか、あまり何かを食べているところを見たことがない。

 創介に尋ねると、放っておいたら1日何も食べないことも多々あると言う。兄は食事に全く気を使っていないようだ。

 それで夕食だけは、創介の店で食べる習慣ができたのだろう。きっと最初は、強制的に真琴に食事をさせる為の作戦だったのだ。


 教室の窓からの風景を眺めながら、真綾は今自分が兄の事をどれくらい知っているかを考えていた。今頃朝の眠気が戻ってきたのか、机の上に寝そべっただらしない格好だ。

 人からそっくりだと言われる容姿、無口なこと、本が好き、英語の音楽をよく聞く。それらは一緒に家にいた頃と変わっていない。しかし最近の真琴の記憶は、真綾の中でぽっかり穴が空いたように情報がない。


 私達が一緒に暮らすのは、およそ5年振りだ。


 でもそれは、結局は自分達が悪かったのだ。


 そのことが、今なら分かる。


 真綾は今、改めて自分の兄の事を知る機会に恵まれた。それを喜ぶのが普通かどうかは分からないが、自分にとっては嬉しい事だ。


「マヤ、なにしてんの。次体育だよ」友人の誰かの声で顔を上げると、みんな着替えを持って教室を出ていっていた。次の体育は水泳の授業なのでみんな更衣室に向かったのだ。

「もう、急がんと置いてっちゃうよ」「あ、待って…」

 待ってくれていた友人に急かされ、真綾は慌てて着替えを取り出し、教室を駆け出る。

「向こうでタラタラ着替えてたら、襲っちゃうからね」

「…ごめんなさい」


 今日は朝から放心してばかりだ。真綾は自分の頬を叩きながら気を入れ直し、友人の後に続いた。





―3―





 やっと“理解”した。

 自分の体は、以前とは変わってしまったのだ。



 津田高尾(ツダ・タカオ)は、昨日1日中街を彷徨い歩き、声を出すことも出来ない喉の渇きに苦しんでいた。

 飲食店を出たあと、ひたすらに水分を求めて前後不覚に陥りながら、目についたスーパで飲料を買い漁った。しかしそれらすべてが津田の口には入らず、触った物から蒸発した。

 

彼は狂乱しその店にクレームを入れたところまでで、鮮明な記憶は無くなってしまった。


 そのあとは、怒り、飢餓、恐怖。


 その解放。


 そして、血、煙、赤。


 “それ”が起こったあと、その場から逃げ出した津田は闇雲に真夜中の街を逃げ回り、“ここ”にたどり着いた。


 祈るような気持ちでその膨大な水に飛び込んだ津田は、その水が無くならないことに気付いた。無我夢中で、喉が満足するまでその薬品臭い水を飲んだ津田は、ようやく安堵して泣いた。


 涙は今まで通り、すぐ蒸発した。

 それを見て、津田は自分の異常について、単純に理解した。

 もはや自分の体は、普通の水では受け付けなくなったのだ。そして、“ここ”にある水だけは、今の自分に合う水なのだ。


 津田は薬品を含んだ水を大量に摂取したせいで、かなり具合が悪くなっていた。それでも今この水場から離れることはできない。

 思案の末、津田は“その中”で眠りについた。何日かぶりの安眠の為、太陽が真上に上がっても津田は眠りから覚めることはなかった。


 そして、津田の安眠は唐突に妨げられることになる。頭を叩かれる感触に、無理矢理に覚醒へと誘われた。


「おい!起きろ、あんたなにしてんだ!」

 水に浸かった津田に、ほぼ真上から怒鳴る声。

「ここは学校のプールだぞ!鍵まで壊して、一体何のつもりでこんなことしてる!」

 見上げた先には数名の教師がいた。彼らはここ神遙学園の教師達だった。

「警察に電話しましょう。絶対不審者ですよ」

「ホームレスじゃないですか?身形も粗末な感じだし…」

「とにかく上がりなさい。もうすぐ授業で生徒達が来るんだ」

 教師達が津田を引っ張り、水から離そうとする。途端に津田は暴れだした。

「だ、駄目だ!俺をここから出すな!俺にはここしか…」

「何を言ってる、いいから…」

 津田は大いに狼狽した。やっと安息できる場所を見つけたと思ったら、そこから引き離そうとする奴らがいる。


 何で、放っておいてくれない?


 そして、その苛立ちを契機に自分があのスーパでやったことを思い出した。津田はこの居場所を守る為、また同じ事をしてやろうと決めた。


 津田がそう思った瞬間、プールの水が音を出し始める。最初は暴れる水音に掻き消されていたそれは、次第にその音より大きな異変となってプール全体に広がった。


 それは水が沸騰する音だった。


「何の音だ?」率先して津田を掴む教師が異変に気付き顔を上げた先に、まるで間欠泉のように泡が弾けるプールの光景が映った。

「あんた、プールに何かしたのか!」

「け、警察を呼びます!」


 津田はその時再びの絶望に陥っていた。


 ああ、この水も駄目だ。駄目になってしまった。それが体感として伝わってきたのだ。


 その時津田の体から変質した電子が発生し、その振動によってこの現象が発生していることに気付ける者はこの場にいなかった。瞬く間に減っていく水とそれに伴う水蒸気に、津田を含めたそこにいる全員がパニックに陥った。


 ドアは密閉状態で、換気も作動していなかった。


 津田の絶望に伴いその威力と数を増した電子により、一瞬でプールの水すべてが蒸発した。視界が白く覆われる。


 引き起こされる水蒸気爆発。


 屋内プール室は轟音と共に、津田を中心に起こる内部からの爆発で吹き飛んだ。





―4―





 突然の凄まじい爆発音に、神遙学園の生徒達がざわめく。相当の衝撃により、一部の窓ガラスが割れてしまったようだ。教師達が生徒の安否と被害の状況の確認の為、慌ただしく駆け回っていた。


「何か爆発したらしいよ」「え、どこで?」

 高等部の生徒達も窓のそばに集まり、爆発がどこで起きたのか見回している。しかし、この棟からは他の校舎の陰になり屋内プールの場所は見えない。背原真琴も窓際に立ち、外を見ていた。

 教師に聞き回っていた生徒が戻ってきた。

「今聞いてきたけど、プール室が爆発したらしいぜ」

「ウソ、うちの学校の?」「しかもちょうど中等部が使おうとしてたところだったって!」

「クラスは?」「くら…え?」

 真琴の質問。男子生徒達が固まった。背原真琴がクラスメイトに自発的に話し掛けるのは、それくらいの驚きを伴うものだった。

「…えーと、たしか2年の6組7組って言ってたような…」

「ありがとう」それだけ聞くと真琴は行ってしまった。


「…うぉー。久しぶりに声きいたー」

「おれ初めてかも」

 場違いな驚嘆をするクラスメイトを置いて、真琴はトイレに入ると誰もいない事を確認した。そして、換気の為の窓から外へ飛び降りた。

 真琴のいた場所は3階。落ちる途中2度ほど僅かな凹凸に足をかけ衝撃を殺す。着地したときの真琴の顔は真剣そのものだ。


 2年6組。真綾のクラスだ。


 真琴は全速力で室内プール室に駆ける。教師に遭うと危険だから近付くなと言われるだろう。だから真琴は校舎の裏側、生徒も教師も通らない狭い場所から屋内プール室のあった場所へと向かう。




 その場所を見た真琴は目を見開いた。



 プール室は中から破裂したかのようにバラバラに“広がって”いた。原型など留めておらず、それは千切れた破片や瓦礫の山と化していた。屋根も跡形もなく、雲のような噴煙が遥か上空まで到達していた。


 もし、あの中にいたとしたら。


 プール室の裏側から接近していた真琴は、何も考えずにその噴煙の中、プールがあった場所まで突入する。ただ、真綾の顔だけを思い浮かべて。その噴煙の中心ほどと思われる場所で、唐突に煙が無くなった。


 視界が開けた先には、男が1人立っていた。


 やけに痩せ細った貧相な男は、まるで乾いた干物のように枯れていた。真琴は周囲の様子から、噴煙はこの男を中心に巻き起こったのだと理解した。


「なぜ、放っておいてくれない…。俺は何にもしてないだろ。おれ、俺はただ、水が飲みたかっただけだ。…なのに」


 そんな男よりも真綾だ。真琴は自分で確認するまでは絶対に最悪の予想を考えないようにしていた。

 男の周囲には誰もいない。爆砕の起点を示す紋様と、その他には…血が。




 吹き飛んで、飛び散った、血痕が。




 真琴は瞬間に思考を放棄した。千切るようにピアスを外す。




 「なのに何で放っておかないんだあ!」




 男の絶叫。しかし真琴の我知らぬ咆哮の方が、それを掻き消す程に大きかった。




 殺す。




 ただの殺意の塊となった真琴が、爆発したような光に押され男に急接近し、その頭を鷲掴んだ。勢いそのままに背後の壁まで押し込み、その場に磔にする。

 男も何かしているのか、周囲の空気が変質していく。そんなことは意に介さず、真琴はその殺意を男にぶつけた。


 右手から生じる回路(サーキット)が男に突き刺さる。


 光の爆発。極大のショート音。





 右手を放したとき、男は精神的に死んでいた。何も感じない、考えない。ただの脊髄運動だけで動く骸となっていた。





 真琴は手を放した後、その場に座りこんだ。


 何も、考えられない。


 半身を喪ったような虚無感。


 マコトもまた、骸になったかのように動けなかった。






―5―






 真綾のいる2年6組は、突然爆発したプール室の間近にいたせいで、飛んできた破片や衝撃で怪我人が大勢出た。しかし室内に不審者がいることが確認された為、外で待たされていたのが幸いした。中に入った生徒はまだ1人もいなかったのだ。

 真綾と友人が遅れて校舎を出たその時にプール室の爆発は起こった。お陰で二人とも特に何の負傷もしていない。現在教師達が瓦礫の前で立ち往生している。噴煙で何も見えないし、近寄って安全かどうか分からないせいだ。消防や救急の人が来ないとどうにもならないだろう。


 目の前で起きたことが信じられなかった。原因はなんだろう。ついこの間の光の災害と何か関係があるのだろうか。マアヤは怪我をしたクラスメイトを介抱しながら、そんなことを考えていた。

「お、そろそろ煙が晴れそうだ」

「ちょっと中だけ確認しましょう。不審者と何人か先生達がいたはずですから」

「でも、これじゃおそらく…」

 先生達の会話を聞き、真綾は嫌な気持ちになる。きっと、死んでいるだろうからだ。あんな中で生きていられるはずがない。

「その不審者、爆弾で自殺でもしたんでしょうか?」

「全く、なんて事をしてくれる…!とにかく中に入って見ましょう。ひょっとすると助かっている者がいるかもしれない」

 男性教師の何人かが連れ立って大分見通せるようになった室内のあった場所へ入った。


 そして、「おい、誰かいるぞ!2人生きてる!」その教師の声に振り返った真綾が見たのは、座りこんだ自分の兄の姿だった。

「おい、キミ大丈夫か?なんでこんなとこに…」





「お兄ちゃん!」

 真綾は立ち上がり、思わず叫んでいた。遠目から見る兄は放心しているように見えた。さっきまでの自分と同じように。クラスメイトを放り出し、思わず駆け出していた。

 真琴が気付いてこちらを見た。驚いた表情。でも、それはこっちだって同じだ。


「大丈夫!?ねぇ、どこも怪我してない?なんで、なんでこんなところにいるの!?」

 真琴はまだ放心した表情を浮かべたままだ。兄のこんな表情を、真綾は見たことがなかった。

「…真綾のクラスだって、分かったんだ。プールの授業。それで爆発があったから…大丈夫かなって」


 …咄嗟に何も言葉が出てこなかった。それで、見に来てくれたのか。それだけでなく、大人がためらうほどの状態のあの中に1人で入ってまで。

 それで自分の身がひどい目にあったらどうするのか。もしそれで、二人とも死んだらとか考えないのだろうか。そうなって、真綾が喜ぶと思っているのだろうか?


「早とちりだったんだね。ごめん、でも、無事で良かった。」


 真綾は真琴に抱きついた。少し前にもこんなことがあったような気がする。今、自分はものすごく怒っている。



 だけど、凄く喜んでいた。嬉しかった。



 真琴についての新たな発見、その2つ目。


 兄は、思慮が浅い。思ったと同時に行動する。




 そして3つ目。


 兄が、自分を大事に思っていてくれたこと。


 今日は朝からボロボロだった。ひどいことも起こった。


 それでも、こんなに満足した日は初めてだった。


 それが、分かっただけで。






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