重なり合う部分。
あなたは音楽が好きですか。
私は嫌いです。
6時間目、英語の授業になっても彼女は戻って来なかった。先生が彼女の席が空いていることを特に気にしないのは、彼女が普段からこんな感じで、そのことをよく知っているからだろうか。
私は彼女が授業に出ないことは気にしていなかった。そんなことは本人の自由であるし、私も音楽の授業をサボったのだ。認めないとは言えない。ただ、去り際の一言が頭に残ったまま離れない。そういえば、初めて彼女に会ったときもそうだっけ。
そんなことを思いながら、私は彼女がいなくなってから、「あなたも」の「も」の意味が何なのか、答えが出るはずもないのに、考えていた。おかけで、苦手な英語の授業は一瞬で過ぎていったのだった。
放課後になって帰ろうとすると、彼女がカバンを置いたまま教室を出ていき、その残されたカバンが机の横にかけられてあることに気づいた。
なに、ほら、カバンの中に貴重品があるかもしれない、そんなカバンを誰もいない教室に置いておくのは良くないだろう、なんていう自分の中だけでの言い訳をつくって、私は彼女が戻ってくるのを待った。幸いなことに今日はバスケ部休みだし、凛と綾佳はいつも通り部活、どうせ一人で帰ることになっていた。
彼女は思ったよりすぐに教室に帰って来た。そして思ったより私が待っていたことに驚きはしなかった。
「なに、君わたしのことまってたの。」
私はさっき考えた言い訳を表に出そうとした。しかし、このひとにあとからつけたような言い訳は通じないと、そんなことはすぐに予想できた。むしろ正直に話す方が好まれるだろう。
「あなたもってどういうことなの。」
彼女は少し面食らったように見えたがすぐ元に戻った。
「やっぱりあなた、音楽が嫌いなのね。」
「嫌いだよ、聴くと気分が悪くなるくらいにね。」
「話してあげてもいいよ、音楽室にいっしょにきてくれたらね。大丈夫、別に君を音楽室に閉じ込めて嫌がらせのようにピアノ弾いたりはしないから。」
私はその申し出を何事もなかったかのように受け入れた。ようにみせた。彼女の前でおどおどするのは嫌だったので、少し見栄を張ったのだ。実際心の中では驚いていたし、音楽室に行きたくないとも思ったし、女子と2人で音楽室という漫画のようなシチュエーションが気になってもいたのだった。
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