『私』という人間
あなたは『音楽』は好きですか?
私は大嫌いでした。
私は高校2年の男子。
それなりに辛い受験を乗り越えて、進学校と呼ばれる学校に入ったわけだが頭がいいという訳ではない。
ここでは夢を持った高校生がその夢を実現させるべく、毎日勉強に励んでいる。
だが、私には『夢』がない。
頑張る意味を見つけられないままに高校2年の期間も、もう終わる寸前まで来てしまっているのだ。
かといってバカなのかと聞かれるが、学年順位では300人で160番前後。まぁ良くも悪くもなく普通と言ったところだろう。
運動能力も普通、顔も普通、コンプレックスは無いと書こうとしたが、言うなればどの点においても特に長所も短所も、得意も不得意もなく普通すぎることが私の唯一のコンプレックスなのかもしれない。
好きなものは特にない。
食べ物においても私の中には「食べられるもの」か「食べられないもの」の選択しかなく、「好き」か「嫌い」かの選択はない。
確かに食べ物で嫌いなものはない。
だが、私には特別に嫌いなモノがある。
それはこの世界で普通に生きていく上で必要なく、なくても全く生活に支障はない筈であるにもかかわらず、わたし達の生活のどんなところでも住み着き、私の気分を害してくる。
世間では「なくてはならないもの」だとか「私を癒してくれるもの」だとか言われているが、私にはストレスの原因でしかない。
町に出て店に立ち寄れば必ず私を待ち伏せし、テレビをつければ永遠と私を攻撃し続ける。
どんなところでもいつであってもそれは私のすぐそばに存在し、耳に入ってくるのだ。
そう、私は『音楽』というものが大嫌いなのである。
世界で一番といってもなんら間違いではない。
それほどに私はきらいなのだ。
これから書かれるのは、
『音楽』が大嫌いで『夢』を持たない少年の高校生活最後の1年間の物語である。
お読みいただきありがとうございます。