僕の嫌いなもの
澄み切った青空。
大きな白い校舎。
その校舎のある教室で、授業が行われていた。
「はーい。今日は歌のテストです。C組の男子から出席番号順に並んでくださいねー」
一人の女の先生はピアノの前でそう言った。
とたん、巻き起こるブーイングの嵐。
遊びたいざかりの高校少年少女たちは各々落胆の色を見せた。
そんな不平不満の言葉が飛び交うなか、凛とした先生の声が通る。
「文句言わないのー。まずは…藍原リク君!前にいらっしゃい」
その瞬間、しばしの沈黙が場を支配した。
ーーーそして、
『うははははっ!!マジすか先生!!』
『こいつがトップバッター!?』
『おーいみんな、耳塞げー!』
どっと、今度は笑いの嵐が巻き起こった。
そんな中、ガタンと音を立て一人の少年が席を立つ。
短い黒髪の少年は、静かにピアノのそばに歩み寄った。
まだ周りの冷やかしが収まらない中で、先生はピアノを弾き始める。
明るく軽やかなメロディーが音楽室に流れだした。
「みんなうるさいわよー。
…じゃあリク君、いくわよ。ワン、ツー、さん、はいっ!」
次の瞬間ーーー
音程の「お」の字もないような歌声が教室に響き渡った。
クラスメイトたちが大爆笑する中で、少年藍原リクは胸のうちで悪態をついた。
「(これだから……歌は嫌いなんだ)」