青葉の場合。
帰り道。サキの家の前です。
「青葉くん……大好き!」
俺は、あの瞬間――――頭が真っ白になって、気がついたらアイツの家の前にいた。
「送ってくれて、ありがとね。若葉くんにもそう伝えておいてくれないかな?」
こんな時にまで、ワカバの話をするんじゃねェ……よ。
サキだから、許すけど。
「じゃーね、青葉くん!」
あーあ。もうサヨナラか。元気いいな、畜生……。
「今日は金魚、ありがとう。その、青葉くんのおかげですっごく楽しかったよ」
金魚……ああ、そうだな。楽しかったな……。
でも、俺はお前といたこと自体が楽しかっ……。
アレ……??
「じゃー、またね!」
しまった……!!
手を振って背を向けたサキを、俺は全力で呼びとめた。
「あっ! オイ!!」
「――――え? 何??」
「いや――――その……」
よく考えてみれば、俺、まだ言ってねェじゃん!
ワカバに先越されて、言いたかったのに言えなかったんだったよ。
「……どうしたの?? なんかあった?」
「いや、別になんてことないんだけど、さ」
「んー、じゃああたし帰……「待てって!」
いいか、落ち着け。……ふう。
「……俺、言えなかったんだよ。お前に“その浴衣似合ってる”って! 金魚すくいの時点で言おうか言うまいか決心がつかなかったところを、勇気を振り絞って言いかけたのに……ワカバが遮るから!!」
最後のほうはなんだか駄々っ子のようになってしまった。
あー……俺、カッコわる。
ぷっ
「くすくすくす……」
「!? おい、オマエー……!?」
「いっやぁ、今更何言ってんのかな~って思っただけだよ」
「いっ、今更?!」
「だってぇ、あの状況だよー? このあたしでも馬鹿じゃないんだから、大体わかるって」
「……知ってたのか、最初っから」
「んー多分ねー?」
俺は、何を色々と悩んでたんだろう。
それが全てお見通しだっただなんて……。
「まぁ、青葉くんの口から直接聞けたから、あたしは満足に越したこと無いけど! ――――って、青葉くん?!」
俺は、本日とても幸せすぎた。