だいすき
夏祭りが終わっても、まだまだ暑いです。
お祭りのちょうちんがまだ赤く並ぶ中、あたしたち3人は夜も深くならないうちに帰宅することになった。
夜の河川敷は空気が澄んでいて、心地よかった。
「花火すごかったねー」
「うん。楽しかった!」
「金魚取り損ねた人間がよく言うぜ」
「なにを~……サキちゃんにちょっと褒められたくらいで真っ赤になってた奴がよく言うよ!」
「おっ、お前なぁっ!?」
「そりゃあ、『大好きだよ』なんて言われちゃねぇ~」
「う、うるさい! 黙れ!!」
「……でも、あたし」
「……あ?」
「あたし、本当に嬉しかったんだよ……金魚……っ」
どうしよう。あたしの悪いクセが……。
涙が……止まらない――――――。
「……おい。泣いてんのか……?なぁ、「サキちゃん、大丈夫?」
若葉くん、ありがとう。でも今はそっとしておいてほしい。
そんなに優しくされたらあたし……。
「ワカバなんかに心配されてんじゃねぇよ!!」
え……?
突如前から抱きしめられる形になったあたし。
「ちょっ……青葉、くん?」
「いいから、泣きやめ」
「アオバ。そういうときは『俺の胸で泣け』とか言うもんでしょ」
「いいからワカバは黙ってろ。……俺にできることは、これだけなんだ」
「あ……青葉くん。気持ちはありがたいんだけど……その、なんだか恥ずかし……」
「いいじゃねぇか……俺も、恥ずいんだって」
もう本当に時間がゆっくり流れているように思えた。
ウソみたいに、心臓がうるさくなって。
「若葉……お前はもう帰ってろ」
「え? なんでさ」
「俺はちゃんとコイツを家に送り届けてから帰る。心配するな」
「いやいやいや。心配なのはアオバのその心境だよ!」
「……おい、ちょっとだけ耳貸せ」
「え」
「俺、本気でコイツのことが――――――――」
「青葉くん……っ」
「あ、悪ぃ。んじゃ、そういうことで……気ィつけて帰れよ」
「ち、ちょっとぉぉ!」
まぁ、いっか。サキちゃんとアオバ、なんだかんだいってお似合いだし。
……あり??
なんでこんなに心がざわつくんだろう。
もうすぐ……雨でも降るんだろうか。
☆★☆★☆
「……泣くんじゃねぇよ、いい加減にしろ」
「っ……だってぇッ……んっ、ふぅう……っ」
「あ、オイ……その、なんだ。いい加減にしろっていうのはな……その、なんだ……お前が泣いているところを見るのが……」
「……っ見るのがっ……?」
「み、み、見るのが……っ――――――つらいだけだ!! 悪いか!?」
「…………」
「なんだ、その沈黙は」
「…………」
「――――帰るぞ、俺」
「…………」
「帰……」
ぎゅっ
「?!」
「やっぱり、青葉くん……大好き!」
俺はこの状況を喜んでいいのだろうか。
続くよ。