fireflower
大きく轟き、盛大に夜空を飾りつける『夜に咲く大輪の花』夏限定というところも、いとをかし。
あたし達は、パラパラと降ってくる火の粉を眺めて、誰から問わずため息をついた。そりゃそうだもん、こんなの見せられてため息が出ないほうがおかしい。
赤青黄緑桃紫橙……パラパラパラッ……
ドド――――――ン……ひゅるるるるるr……ドドドドーン!!!
「おおきいねー」
「うん」
「すごい綺麗……」
「うん」
「……夏だね」
あたしたち、いつの間にか大事なことを忘れてた。小さい頃すごく楽しかった思い出を。
夏祭りに行ったら、とにかくはしゃいで大人を困らせてた。迷子になって、皆に迷惑かけてた。
でも、いい思い出だった。
今はもうそんなことは無くなって、大人と一緒に来ることもなくなって、こうして友達と遊びに来ている。それがなんだか大人になったように感じて、嬉しくもあり寂しくもあり。だけど、この変わらない風景だけは残しておきたいと思った。
「そういえばさ」
「んーっ? 何ー」
「お前の浴衣……」
「金魚柄だよねー。可愛い!」
「え、本当?」
よく見たら花びら模様だと思ってたのが、金魚柄だった。笑える。
「ありがとう若葉くん」
「おーまーえー……俺が言うことわかっててわざと遮ったな……?」
「いやぁ。たまたまだよ」
「あれっ、青葉くんさっきなんか言いかけてなかったぁ?」
「べ、べつになんでもねーよ」
「ひゅーひゅー」
「いい加減黙ってくれるか、ワカバ」
「クスクス……。なんて言おうとしてたのー?」
「それはねー、サキちゃんの浴衣が……」
「いっいいから! 花火みようぜ!!な??」
「むー、気になるのにぃ」
花火大会は、もうすぐフィナーレです。
来年も同じ3人でこうして夜空を見上げていたい。
続きます。