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候ふて  作者: 空と雲
1/6

「またのご来店、お待ちしてますね」


あたしは入り口まで出て、ペコリと頭をさげる。


「あらあら、咲ちゃん大人になったこと」


「いえいえ」


 お客さまをお見送りしたあと、あたしは店番に戻る。


 いい忘れたけど、あたしの家は、お茶やさん。

 挽茶ひきちゃ本舗「しょう」の看板娘をしている。


 店の名前はショウだけど、あたしの名前はサキだ。お得意様にもよく間違えられる。

 だから、冒頭で毎回説明するハメに。



 店長はあたしのおばあちゃん。今は店の奥で寝たきりだけど、いつもあたしのことをたくさん可愛がってくれる、優しくて大好きなおばあちゃんだよ。


 そんなおばあちゃんに、少しでも安心してもらえるように、今、こうしてあたしが一人でがんばってる。


 がんばって、もっとたくさん誉めてもらうんだもん。



「さっちゃん」


 戸口から声がした。

 おばあちゃんだ。



「なあに」

「若葉くんたちがおもてに遊びに来てるよ。遊んでらっしゃいな」



 若葉くんはあたしの幼馴染。その他にもう1人、若葉くんの双子の兄弟の青葉くんってコがいる。同じく幼馴染。


 遊ぶといったら、今の子たちは"ゲーセン"やら、"ボォリング"やらといった、ビカビカしたものを連想するらしい。

 けど、あたしたちはそんな細かいこと、考えないよ。

 時には河原で日向ぼっこ。時には公園でピクニックごっこ。またあるいは、海で水遊びや貝拾い。


 3人、いつも一緒。1人でも欠けてると、なんか物足りない。3人が一番落ち着く。そんなもんでしょ。

 何気無い一瞬が、あたしの一番のしあわせ。

 だけど、寝込んでるおばあちゃんと常連のお客さんをほっぽいて、あたしだけが楽しんでいい訳がない。でもさ、同じハカリにかけると、どうしても自由にかたむくのが人間というもので。


「おばあちゃん……」

「そんな悲しい顔するんじゃないよ。私のことはいいから、お友達と遊んでおいで。」


 おばあちゃんの言葉はいつもあたたかい。

 だから言葉一つで安心するし、勇気がでる。



「わかった! 行ってくるね!」


「いってらっしゃい。気を付けるんだよ」

「はぁーい」



あたしは家を飛び出した。


「ごめん! 待った~?」


お茶は玄米茶がすきです。

どくだみ茶は少しニガテ。

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