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吉岡習書  作者: 朱椿
1/2

駄文ですがご容赦下さい。

慶長12年11月2日_伊勢国_桑名藩主別邸


「吉岡厳之丞勝秀、只今参じょ・・ッ!」


前方、桑名藩主・本多忠勝から手裏剣が唸りを挙げて飛んでくる。

忠勝のその剛腕から投げ放たれた手裏剣は、50を過ぎた隠居間際の老人が投げたと思えぬ程の速さ・威力を持って、頭を下げる吉岡へ迫る。


頭を下げながらも忠勝を警戒し続けていた吉岡が動いた、右腕を畳からはなし頭の前へ持っていく。


キンッ


「おぅ!なんじゃ勝秀、お主ついに人を辞めたか!」


投げた手裏剣が吉岡の腕に当たり金属音を上げて弾かれたを見た忠勝が愉快そうに笑う。


「何を戯けた事を、某はまだ人で御座いまする、なれば頭に手裏剣が刺されば死に、又花瓶で頭を殴られても死にまする。もう毎度毎度お目にかかる度に命の危険を感じるのは嫌に御座る。お止めくだされ」


毎度の事とはいえ戦国で名を挙げた武将の一撃、これでは命が幾つあっても足りぬ、と吉岡は忠勝に懇願する。


「しかし、お主先程手裏剣を腕で弾いたでわないか」


「それは、腕に鉄の防具を着けており、それで弾いただけの事、決して某の腕が硬化したなどということは御座いませぬ」


「そうかそうか!学習したのぅ。初めの時など避けきれずに当たって痛い痛いとぴぃぴぃ泣いておったのに」


「はぁ・・・」


吉岡の懇願など聞いていないとばかりに話を進める忠勝に、これでは話に成らぬと、吉岡は溜め息をついた。


「さて、戯れは此処までじゃ、吉岡厳之丞勝秀、お主に密命を与える」


「はッ」


「吉岡此を見よ」


そう言って忠勝が懐から取り出したのは一枚の書状。


「此にはこの徳川の天下を揺るがそうとする小童どもの名が書いてある、お前には彼奴等を斬って貰いたい。やってくれるな?」


「忠勝様の御命令と在らば」


「よいか、一刻後、お主は追われる身となる、謀反の罪じゃ、それでもか?」


「この身は忠勝様に捧げたものなれば」


「そうか・・・ならば行けぃ」

「御意」


言うや否や吉岡は、外に飛び出し庭を走り抜け、ひょいと飛び上がりと身の丈2メートルは在ろうかという塀を越え夜の闇へ消えていった。


「死ぬなよ・・・」


その呟きもまた、誰に聞かれることもなく、ただ吉岡の背があろう方向えと消えて行くのだった。

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