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第六章⑪
ウサコは講義が終わると一目散に寮に帰った。隣にはアリスもいた。普段元気の塊みたいな真奈のみすぼらしい写真が撮りたいのだと言う。本当に、いい性格をしている、とウサコは思った。
「真奈さん、ただいま戻りましたよぉ」
しかし、部屋に真奈の姿はなくてウサコは慌てた。布団を捲り、二段ベッドの上段を確認してから、寮の全てのスペースを探した。真奈さん、真奈さん、どこ? いない。息を切らせ部屋に戻ると、その絶望的な表情をアリスに一枚撮られた。咎める気力もない。
「ウサコ、こんなのが落ちてたんだけど」
「え?」
ベッドに座り込んだウサコはアリスから一枚の紙切れ、いや、手紙を受け取った。
文面を読む、何回も。持つ手が震える。表情に怒りが現れる。手紙を床に落とした。頭を抱えた。気がふれて、爆発寸前だった。いや、そんな暇なんてない。急がなきゃ。
「ウサコ?」アリスが心配そうにウサコを覗き込む。
「もう、私を困らせないでよ、ミソラ!」ウサコは声を張り上げ、まさに脱兎のごとく、旧校舎の噴水に走った。




