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第六章⑩
その頃、ホーム・シックで憂鬱で実際に気分が悪くなって眠っていた真奈は目を覚ました。
そして真奈は自分がとても暖かいモフモフしたものを抱きしめていることに気が付いた。
……小ウサコ?
真奈はウサギを抱きしめていた。
いや、違う。額の渦巻きが逆で、この子は、ミソラの、ミルフィーだった。
真奈は布団を蹴って起き上がる。まじまじとミルフィーを見つめる。
「訳が分からん」真奈は独り言を呟いて、ふと、気付く。
首輪に差し込まれた、小さな紙切れ、いや、手紙に。
「……君は伝書ウサギか?」
真奈は高鳴る胸の鼓動を必死に抑えながら、手紙を抜き取った。開いて、読む。
文面を何度も何度も読み返す。
そして急いで制服に着替えた。もう着なれた明方の制服に。それから髪を梳いた。うまくまとまらない。ピョコッと毛先が跳ねる。顔を洗いに洗面台に走った。冷たい水が気持ちいい。メイクは、いい。早く会いたい。鏡の中の真奈の顔は綺麗だ。タイのズレを直して、ミルフィーを抱いて旧校舎の噴水に走る。




