第六章①
さて、この章がミソラ編のラストです。つまり、アンコール前。
私は今、NTKの執筆の傍ら、略して「しくじょ(私・苦・女)」を投稿しているのだが、いかんせん、私の描いたミソラの物語の方が多くの方々に読まれているらしい。(逆に新田クラクションはさっぱりだ。もしよかったら女の子と女の子がキスする場面まで読み進めてほしい。嫌いじゃないと思うんだよなぁ)
とにかく、ミソラが読まれていることが不思議だ。
未来から読み返してみると、改めてこの物語はわけがわからないと思った。
もちろん、私が描きたいものだったし、描いたものだった。
うん、つまり、私が懸念していることは一般的にどうか、っていう私らしくないこと。
一般的に美しいのか、醜いのか、笑えるのか、笑えないのか、笑ったとしてそれは暖かいものなのか、冷たいものなのか。
コーラなのか、サイダーなのか……。
誰か、クスリとでも、微笑んでくれた?
しかし、とにかく私は、多くの人に読んでもらえて私は嬉しい。
読んでくれている人が女の子ならなおよし。
楽しんでください。
ラストを。
カラオケパーティみたいに、何もかも忘れて。
疲れは朝に来るかもしれないけれど。
「ただいま」
たどたどしい足取りで比奈はミソラのコレクションルームに帰還した。
合わす顔がない、というのが正直なところ。結局、ミソラに電話はしなかった。
しかし、比奈には、比奈たちにはココしか帰る場所がないのだ。
ココが家。お家に帰ろうと言ったら、今ではもう実家よりもココを考える。
ココが、私を支えている、大切な場所。
大切なものはココに沢山置いてある。
抱えきれない大切なものを置いておける場所なのだ。ココは。
だから、家に帰ろう。
「ただいま」
玄関から二歩歩くと、キッチンの方からいい匂いがした。比奈はすぐにキッチンの中には入らずに、覗く。
「遅かったじゃないか、わざわざ遠回りをしてきたのか?」フェイスブックの画面を見ながらお玉で鍋の中を掻き混ぜていた。ミソラは膝の上のフェイスブックから顔を上げて言った。「誰もいないから、寂しかったじゃないか、さぁ、ご飯にしよう」
比奈は息を吐いた。態度から察するに。ミソラはもう事の成り行きを知っているようだった。比奈もミソラみたいな平気な顔をしてキッチンの中に足を踏み入れた。
「梨香子は明後日には帰ってくるそうだ、」きっと監視カメラを確認したり、大学病院の情報を盗んだりと悪いことをしながらミソラは料理を仕上げたのだろう。「それまでは二人だけだな、久しぶりだな、二人っきりは」
「うん、」比奈は無理に笑った。ミソラも強がっていたから。「久しぶりだね」
比奈は食事を盛ってリビングに運ぶ。
テーブルには灰皿の中でくすぶっている四本のタバコ。その匂いは珍しかった。いや、出会った時は、確か、ミソラはヘビースモーカだった。慌てて叱責した昔の自分を思い出す。『未成年でしょ!?』ってな感じに。あの頃は二人でもよかった。けれど、今となっては、梨香子とかなえと真奈がいなきゃ駄目なんだ、ミソラは、いや、きっと、私も……。




