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第五章③
洗濯工場の入り口で梨香子は何かを感じて背後を振り返った。「…………?」
「どうしたの?」先に中へ入った比奈が振り返り聞く。
「いや、なんだか、」梨香子は一度見回した背景をもう一度見回した。「誰かに監視されているような気がして」
「この辺りには監視カメラはないはずよ、悪い女の子たちには守る価値なしってやつ、ああ、だからミソラも心配してたのかぁ」
「そうかも」梨香子は頷きながらまだ背後を気にしている。
「ミソラが言っていた怪物?」
「まさか」と梨香子はクールに笑った。「きっと気のせいだ、ミソラがそんなことを言うから、私もきっと神経質になっているんだ」
「私は梨香子の勘みたいなものを、信用してるんだけどな」
「あんまり私を信用しない方がいいよ」
「ねぇ、二人とも何してるの?」少し離れたところで真奈が呼ぶ。
「ああ、ごめん」梨香子が真奈に向かって手を上げ歩き出した。その後ろに比奈も続く。




