8.バンダゲ -BANDAGEー
ジュースをすすめてくるだけなら、まだ良かった。
オカマも、英語の部員も、ただ自分の主張を通そうと、話し合っているだけ。
パソコンの画面を見て1人で笑っているメガネの男子は、ただ好きなことを満喫してるだけ。
ただ……
ただ、暴力はどうかと思うよ。
暴力だけにものを言わせて……部員同士の口論がうるさかったからって、机壊しちゃダメでしょ……!?と、言えない自分が情けない。……男なのに。
それどころか俺、今すっげぇー泣きたい気分なんですけど。だって浮いてるじゃん。明らかに俺、浮いてるじゃん。だって俺だけ『ふつう』な感じだし。『ふつう』を保っておくのに俺、すごく神経使うんですけどなんで!?
その……えぇっと、怪力の部員、彼女が机を破壊したことにより、オカマと英語女はとりあえず言い争いをやめた。
オカマが口を開く。
「それにしても相変わらずねぇ。きょうこってコードネーム、ぴったりだと思うわ。本当、力が強いんだから」
ん……!??今の、聞き間違いかなぁ!?
てか『きょうこ』って、コードネームだったの!?きょうこって……もしかして強子!?センスねぇー!!誰だよそんな名前つけたの!!
「あたしに感謝しなさいよ?こんなぴったりなコードネーム、ほかにないんだから」
と、オカマが続けた。
お前かよ!と突っ込む気力もなく……俺はひそかにため息をもらした。
** * * *
ばん!
なんの前触れもなく、勢いよく扉が開いた。と思ったら――――
なぜか全身傷だらけの男子部員が入ってきた。
傷だらけというか……なんかもう、全身血で滲んでるよ!?いったい何があったの!?この人はなんだか……見た目からして危険なにおいがぷんぷんしてるんですけど。お願いですから、俺に話しかけないでくださいね、お願いですから。
傷だらけのその部員は、ふらふらとおぼつかない足取りで俺の近くまで来た。
「It ……seeming pain……」
俺が心の中で祈っていると、英語の部員が、何やらつぶやいた。なんか、すごい切なそうな顔してるんですけど。
「痛そうだね、だってさ」
オカマが通訳。って分かるんだ、英語!?やっぱり分かるんだこの人!何者!?実はすごい賢いやつなのか……!!?
傷だらけの部員さんとなるべく視線を合わせないでおこうと若干下を向いてる俺は、その部員さんがどんな顔をしたかは分からない。
俺のとなりで、ずずず……とジュースをすする音が聞こえてきた。もう驚かない。あなたのお腹はいつでも水分を欲しているのですね。
「バンダゲってさ、いっつもケガしてるよね。なんで?」
「……さぁな」
ジュースの部長さんの問いかけにも適当に答える傷だらけの部員。
「『バンダゲ』ってね、コードネームなんだけど、これは英語をローマ字読みした読み方で――――日本語では『包帯』って意味なんだよ」
と、ジュースの部長さん、こっち見てる?こっち見てるよね!?それ俺に説明してんの!?そんな説明受けて俺、どんなリアクション取ればいいわけ!!?
あれ、しかもなんか、視線を感じるんですけど。傷だらけの部員さん――えっとバンダゲ?さん、こっち、見ないでもらえます?ほんと、イヤな汗かくから。
「あのさ、君」
俺の横に座りながら――俺は、肩に手を置かれた。右隣にジュースの部員、左隣にはバンダゲさん……完全にはさまれた!!話しかけられて無視するのはどうかと思うので、そおっと顔を向けると……
「いっしょに保健室、行ってくれないかな?」
にこ……っと何も企んでないような、企んでるようなほほ笑みを俺に向けて、そして俺は傷だらけの人間を前にして、うなづくことしかできなかった。
自分のかばんを、持ってくることさえも忘れて。




