3.英語の少女
お題;オカマの存在意義について
俺はお題を与えたつもりはないのだが、オカマが自らの存在意義について語り始めてから30分以上…………そろそろ終わりにしてくれないだろうか。
最初に言葉を交わした、ジュースの部員……彼女は、俺の隣で順調にりんごアップルジュースを飲んでいる。というか、いつまで飲んでいるんだ……?というか、俺にすすめたはずのりんごジュースまで空になっている。すすめたんなら自分で飲むんじゃねーよ。
「これ日常だから」
と、オカマが喋り続けることに対し、ジュースの部員はそう言い放った。
お前がジュースを飲み続けているのも日常なのか……?と聞きそうになったが抑えた。なんか、会話したらまたジュース押しつけられそうだ。この人も、別の意味で怖い。
そして俺はこの時、この部活内で俺の常識は一切通用しないだろうことを確信した。
ここは美術部。
絵を描いている人は本当に1人もいないのかと、部室内を見渡すと……奥の方で筆を握っている女子部員がいた。ここからでは何を描いているかは分からないが、ちゃんと絵を描いている。まともな人もいるんだなと、少し安心した。
オカマは相変わらず。
そして、なぜか話は、ジュースのパッケージからアメリカの豊かさについて移り変わっていた。
「アメリカはいいわよねぇ、なんでもあって。なんでも出来て。自由でさぁ。ちょっと知ってる?アメリカの人、日本の家を見て『これはウサギ小屋ですか』って言ったのよ?どう思う、これ?ひどくない?侮辱しすぎよねぇ」
話を振られてもなんとなく対応に慣れてしまった自分が、恐ろしく感じた。一生この人の流れに飲まれてしまいそうだ。ホント、そろそろ帰らせてくれないだろうか……
さっきまで静かに絵を描いていた部員が、音もなくこちらに――――オカマの方に近づいていた。
「Hey」
ヘイ、と言った。からかっているのではない。キレイな英語の発音だったが、その声や顔からは明らかに怒っていることが分かる。
きっと、オカマが1人でべらべらと喋っているものだから、うっとうしかったのだろう。
だが、次に彼女から発せられた言葉に俺はあぜんとした。
「Isn’t it you that insult? Without holding it in derision, what do you understand? After all, you might be only envied.Miserable living thing.It sympathizes. To poor…… 」
英語!?全文英語!?何この子、天才!?明らかに日本人だけど!てか何言ってるのか分からない!!
「何よその言い草。自分だけ分かったような口ぶりやめてくれない?かわいそうなのはどっちよ」
オカマが明らかに不快そうな顔をして言った。が……
なんか、2人会話してるっぽいんですけど。通じてるの、それ!?
「I hate man like you. Man who criticizes…… foreigner like you so. The zero is also just like for me! 」
「なっ……そこまで言う!?虫けらはひどいんじゃない?いくらなんでもねぇ、あたしは人間なんだから。あんたの方がよっぽど侮辱してると思うけど!」
いったいどういう話をしてるんだ……
この英語の人、さっき静かに絵を描いていたから一番まともな部員だと思ったんだけどなぁ……これじゃあ、依頼の前に意思の疎通ができないだろ。
はぁ……と、ため息をつく。
「あの、これも日常っスか?」
「うん、そだねー」
ずずずず、と残りのジュースを飲みほしながら、ジュースの部員は当然のごとく答えた。
「あの英語喋ってる子ね、純粋に外国が大好きで、外国人とかの悪口言われたりするとすっごい怒るの」
「いつも英語……喋ってるわけじゃないよな……?」
なんかもう、ここに来てから『ふつう』の感覚がなくなってきたので、当たり前のことを聞くのにすごく不安になってしまう。
「うん。いつも英語、喋ってるよ。何言ってるか私には分かんないけど」
なんだよ本当に!え、毎日喋ってんの?英語で生活してんの?なんで!?
その理由を聞いても理解できるか大いに心配だったが、聞かずにはいられなかった。
「……理由は?」
「さぁ? 好きだからじゃない?」
あーなるほどー。好きだから。いたってシンプルな答え。まぁ、当たり前だよな……
なるほどね……
英語が好きだから毎日英語喋る、ジュース好きだからジュース飲み続ける、オカマが好きだから自分もオカマになる、
あたりまえ。
………………か……?
これは、当たり前の考え方なのだろうか。
俺の脳内、ただいま混乱期真っただ中。
今回はナゾな少女の登場でした。
こんな子、実際にいるかな…
いたら怖いですよね…笑




