2.コードネームはゴリラ
主人公とオカマの絡みです。
と言っても、オカマの方が一方的に絡んできてるだけですが(笑)
ニューハーフを実際に見たことのない私が描く話など、なんの説得力もないでしょうが、まあ……期待しないで読んでいただきたい。
「ねぇ知ってるぅ?これはビンに入ってるからアレだけどぉ、紙パックのジュース?あぁいうのって、アップルだとかオレンジだとか、果実100パーセントだとパッケージのイラストがフルーツの断面図なのよ」
やたらごつごつとしたそのオカマは、聞いてもいないことをべらべらと喋り始めた。
なんつーか……もはや依頼を切り出せる雰囲気は欠片もない。
「ちょっと。聞いてんの?」
オカマと言えども……正体は『男』。見据えられたら迫力がある。俺は、思わずひるんでしまった。
「あ……ハイ……」
「ところで新入部員、名前は?」
新入部員じゃねーよ!!
てか2年だし!
見りゃ分かるだろーよ、この学校はネクタイの色で学年決まってんだから!!俺は黄色だから2年生しかあり得ないんだよ!!分かれよそんぐらい!
心の中で泣きそうになりながら、このオカマは青色のネクタイだから3年だなと、冷静に見極めようとしている自分がいた。
「森林……豪理羅」
俺は、なるべく自分の名前を口にしたくなかった。漢字だけ見たら体裁はいいかもしれないが……明らかにふざけた名前だ。俺は自分の名前が嫌いだ。
「もりばやし、ごりら?」
復唱すんなよ!こっちだって嫌なんだよ、そんな名前。
「じゃあコードネームは『ゴリラ』ね」
コードネーム……!?なにそれ!!
どっかの組織じゃねぇンだよ、部活だろーが。しかもコードネーム・ゴリラって……カッコ良くもなんともねぇよ、嫌味か。
「ちなみに、あたしのコードネームは『オカマ』だから」
嫌味じゃねーかよ!!なんだよそれ……オカマって、それ呼ばれて嬉しいのか……?せめてニューハーフとかにしとけよ!
ふと、オカマが真剣な顔つきになって聞いてきた。
「ねぇ……あたしって、男だと思う?女だと思う?」
オカマだろ!!?
分けわかんねーよこの質問!!
でも……と俺は思う。
本来は男なのに、化粧やオシャレをしているということはきっと女になりたいからなのではないか。だとしたら、周囲の人間からは『女』と言われた方が本人にとって幸せなのではないだろうか……
「……女…………?」
迷って迷って、躊躇して紡ぎだした言葉。
でも、オカマの正体が男か女かなんて、たいした問題ではないのではないか。だって感じることは人それぞれなわけだし。
……と、勝手に自分で納得していると……
「……あぁ?」
オカマがにらんでいる。ものすごい形相なんですけど!
なんか俺、まずいこと言った??いや、すっげぇ怖い……
「あぁぁ、あの……」
「女なわけないだろ、ボケが」
「あ、ハイ……そっスよね……」
「オカマってのはなぁ、男とか女とか、そういう簡単な言葉で片付けられるもんじゃないんだよ!クズが」
だったらなんで聞くんだよ!だったらなんで質問の選択肢に男と女入れてんだよ!!
「お、俺もそう思います……」
身の危険を感じて、自然と視線が下に落ちていた。
自分の靴の先を見つめながら、俺、何してんだっけ……?と、当初の目的すらも忘れてしまっていた。




