12.めちゃくちゃな部員たち
最終話です!
なんだ、これは――――
目の前で起こる出来事が信じられない。
俺は、強い。
ずっと……中学に上がった頃からずっと、喧嘩だけが強くて、喧嘩だけが自分を表現できるたった一つの方法で、そんな俺につき従う2人の舎弟は、決して弱くはなかった。
なのに。
2人とも、ほぼ瞬殺の勢いでやられた。
今まで出会ったことのない強豪を前にして、藤沢は、何もできずにただ立っているだけだった。
そして。
気がつくと、なぜか自分は口にりんごジュースを押し込められ、さらに別の少女から英語の罵声(多分)を浴びせられ、もう何が何やら分からなくて意識もほとんど無い状態になってしまっていた。
このとき思ったことはただ1つだけ。
女には、気をつけよう。
薄れゆく意識の中で、一生のトラウマになるであろう『女』の存在に、藤沢は初めて警戒の色を濃くした。
「あの」
場所は変わって、廊下。
みんな忘れていると思うが、主人公である『森林豪理羅』は現在『バンダゲ』という名の男子部員と共にいる。
キャラ濃い美術部員に囲まれて困惑していた森林を、バンダゲが連れ出した。
ちなみにバンダゲというのは、なぜか日々負傷している部員であり、常に包帯を巻いている。『バンダゲ』という名前も、『包帯』を英語でローマ字読みするというのが由来だったりする。
「ん?」
保健室に連れて行ってほしい、と頼んできたバンダゲだが、現在ではちゃっかり1人でちゃっかり歩いて、付き添いなど必要ないように思える。
「俺、要ります?」
「そりゃーねぇ、頼りにしてるぜ☆」
「……」
明らかに元気そうなバンダゲ。
「あの」
「ん?」
「俺、帰ります」
バンダゲに背を向けると、森林は今歩いてきた廊下を戻ろうとしていた。
「ごめんね」
バンダゲが申し訳なさそうに謝った。
「え?」
当然ながら、森林はなんのことか分からない。理由を聞こうと思い、体をバンダゲの方に向ける。
「いやさぁ、ほら、あいつらの事。なんか色々強引だったでしょ?でも悪い連中じゃないからさ。滅茶苦茶だけど、悪気とか全然ないし。だからさ、許してやってよ」
そのとき、心の奥まで響くような地鳴りがした。
そう、それは戦地でしか耳にしないような大音。間違いなく、爆発の音だ。
窓の外を探してみると、部室庫棟の一つから煙が上がっていた。
「あちゃー、やりやがったなぁ、あいつら……」
と、バンダゲは頭をかいている。
あいつら……?と、いうことは……?
「行こうぜ、森林!」
そこは、使われなくなった卓球部の部室庫だった。
外で携帯をいじっている男子が一人。
「よーインテリ。また置いてかれたのか?」
バンダゲが近づくとインテリは顔も上げずに冷やかに会話する。
「いつも放置されているような言い方はやめてくれる?ボクは待機してるだけ」
そして、現在もまだ立ちこめている煙の中から出てくる人影が4つ……
森林が、彼女たちが先刻の美術部員だと気がつくのにそれほど時間はかからなかった。
初対面のときと変わらずりんごジュースを飲む部長は、おもむろに森林に近づき何かを放り投げた。
ピンクの、なくしたはずのストラップだった。
「え……?」
森林はあぜんとする。
なぜなら、依頼も何も話すらまともにしていなかったのに……
一瞬、この部員たちがエスパーだと勘違いしまうほどの錯覚に陥った。
「これが俺たちの、強み……ってやつ?」
となりにいたバンダゲが得意そうに話す。
どんな手を使ったかは知らないが、どうやら団結力だけは誰にも負けないらしい。
「言っとくけど!あんたの為ちゃうから」
「携帯のアドレス」
「ホラ。かばん、忘れてたわよ。ゴリラちゃん」
「I was very happy. Thanks 」
「今度は遊びにおいでよ。じゃあね、大事にしなよ、そのストラップ!」
たしかに滅茶苦茶だ。だけど、悪くない。




