3話 転生したわけ
早野「お、俺が美少女になってるぅー!?!?!?」
リリサ「うん、びっくりするのも無理ないわね。」
(リリサは紅茶を一口すすりながら落ち着いた様子)
早野「ちょ、ちょっと待ってくれ……どうして俺が……こんな姿に……!」
リリサ「あなたを“選んだ”のは私じゃないわ。魔法が選んだの。」
早野「魔法が……?」
リリサ「エルフの転生魔法はね、ランダムで魂を呼び寄せるの。
ただし――“器に適応する魂”が呼ばれやすいの。」
早野「器に……適応?」
リリサ「そう。この世界にまだ肉体を持たない“魂の欠片”を、
私が作った器に宿らせるの。けれど、合わなければ拒絶反応を起こして消えてしまう。」
早野「消える……って……」
(背筋がゾクリとする)
リリサ「でもあなたの魂は、驚くほどこの器と共鳴した。
正直、こんなに綺麗に転生が成功するなんて初めて見たわ。」
早野「そ、そんな偶然あるか……俺、普通の工場勤務のおっさんだったんだぞ……?」
(ふと、頭の奥に蘇る記憶)
退勤中、信号待ちで見かけた女子高生たちの笑い声。
夕陽の中、友達と肩を並べて歩くあの楽しそうな光景――
早野(心の声)「“いいなぁ……俺もあんなふうに、笑って生きてみたかったな……”」
リリサ「……思い当たること、あるでしょ?」
(まるで心を読んだように微笑むリリサ)
早野「ま、まさか……その、俺が一瞬考えたことが……?」
リリサ「ええ。あなたが“もし女の子だったら”って考えた瞬間、
あなたの魂はこの器と波長を合わせたの。
だから呼び寄せられたのよ。見事にね。」
早野「……おいおい、それってつまり……
俺の“もしも”が、現実になっちまったってことか……!?」
(頭を抱え、ぐったりとソファに沈み込む)
リリサ「まぁ、そういうこと。
でも落ち込むことないわ。あなた、すごく綺麗よ?」
早野「いや褒められても困るんだよ!? 俺、元はおっさんだぞ!?!?」
(リリサ、クスッと笑う)
リリサ「“元は”でしょ? 今はもう――この世界で生きる新しいあなた。
名前も、考えなきゃね。」
早野「……名前?」