優雅なる貴族の戦い“デュエル・オブ・グレイス”
『えるてん!』は
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通勤・通学、朝ごはんのお供に
ティナたちのほのぼのな一日をどうぞ♪
今日も“えるてん!”で、ちょっと笑顔になれますように✨
(放課後の街並み。石畳の道に橙色の陽光が差し込み、商店の看板が柔らかく輝いている。
文化祭から数日後、三人は穏やかな午後の空気に包まれていた。)
ティナ「カレンが元気になって良かったよ。」
リオナ「文化祭の時は本当に心配しましたけど……すぐ良くなって安心しましたわ!」
カレン「ふふっ、二人ともありがとう!」
ティナ「やっぱりガーちゃんのアロマのおかげかな?」
カレン「あはは……うん、そうだね……(あんな悪夢もう二度と見たくない……)」
(カレンの脳裏に、ピンクの爆煙とギャルの奇跡が一瞬フラッシュバックする)
カレン「うっ……まだ頭の中がラメに侵食されてる気が……」
ティナ「大丈夫!? まだバイブス感じてる!?」
カレン「感じてないからぁっ!!」
(リオナ、くすっと笑う)
リオナ「ふふ……本当に賑やかですわね、あなたたち。」
(そんな他愛のないやり取りの中、三人は笑いながら街を歩いていると――)
――ガタンッ!
(黒塗りの高級そうな馬車が、三人の目の前でピタリと止まる。
車体には豪奢な紋章。馬の毛並みは絹のように輝いている。)
ティナ「な、何あれ……?」
カレン「すっご……リオナの家の関係者?」
(馬車の扉が開き、眩しいほどのプラチナゴールドの髪が揺れる。
縦巻きロールに整えられたその髪。冷ややかに輝く瞳。完璧な立ち姿。)
???「リオナじゃありませんの!」
リオナ「まぁ! ルシル様!」
ティナ・カレン「……誰?」
リオナ(にこやかに)「紹介しますわね♪ こちら隣町の名家のご令嬢、ルシル・グランテール様ですわ!」
ティナ「あ、ティナ・フローレンスです。」
カレン「カレン・ホワイトロックだよ! よろしくね! ルシルさん!」
(カレンが笑顔で手を差し出すが――)
パシッ
(ルシルが軽く手をはたく。)
ルシル「庶民の分際で気安く︎︎ ︎︎“ルシルさん”などと呼ばないでいただけるかしら。」
ティナ「(うわぁ……絵に描いたような悪役令嬢……)」
カレン「あ……ご、ごめんなさい……」
リオナ「ルシル様! ティナ様とカレン様は、わたくしの大事なお友達ですのよ!
庶民などとバカになさらないで!」
ルシル「この庶民どもがリオナの友達!? ふふっ……ヴァレンシュタイン家も落ちたものね。
まさか大事なひとり娘が“庶民”とお友達ごっこだなんて。」
リオナ「ルシル様! それ以上わたくしのお友達を侮辱するのでしたら――さすがのわたくしでも看過できませんわ!」
ルシル「……なによ、その目。わたくしとやり合おうって思ってるのかしら? いいわ。
“デュエル・オブ・グレイス”で勝負しようじゃない。
もしわたくしが負けたのなら、今の発言、すべて謝罪いたしますわ。」
ティナ「(デュエル・オブ・グレイスって……なに……?)」
(リオナとルシルの視線が交錯し、空気がピリリと張り詰める。)
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(街外れの広場。人通りもなく、石畳の上に夕陽が伸びている。)
ルシル「ここなら邪魔は入らなそうですわね。」
ティナ(小声で)「ねぇリオナ……“デュエル・オブ・グレイス”って何?」
リオナ(小声で)「貴族たちの間で行われる、高貴な戦いですわ。」
カレン(小声で)「だ、大丈夫!? 怪我とかしないでよね!?」
リオナ「ヴァレンシュタイン家の名に恥じぬよう、絶対に負けられませんわ!」
ルシル「何を三人でヒソヒソ話しているのかしら? リオナ、始めますわよ。」
(二人は互いに向き合い、両手を構える。空気がピンと張りつめる。)
ティナ&カレン「……ごくり。」
ルシル「いいかしら? 体を狙うのは反則。一歩でも動いた方の負けですわよ。」
リオナ「……心得ておりますわ。」
――デュエル・オブ・グレイス、開始!
(ピンと空気が張りつめる。
両者の指先が静かに触れ――ふわり、押し合いが始まった。)
ルシル「ふふっ、優雅に見えるのはここまでですわ!」
(その瞬間、ルシルの瞳がギラリと光る。上半身をグッと前に倒し――)
バシィィィィッ!!!
(両手に体重を乗せ、リオナを吹き飛ばす勢いで押し込む!)
ルシル「どうしましたのリオナ!? この程度で崩れるのかしらぁ!?」
リオナ「……ぬ゛ぅぅぅんっ!!!」
(リオナはその一撃を正面から受け止める。普段のおっとりした印象とは思えぬ雄叫び。ドレスの裾が風をはらみ、足を地に踏みしめる。)
ルシル「……やりますわね。」
リオナ「ルシル様の一撃も中々ですわ。」
(押し合う二人の間に火花が散るような緊張。ティナとカレンは小声で見守る。)
ティナ「ねぇ、カレン。」
カレン「うん?」
ティナ「“デュエル・オブ・グレイス”ってさ……手押し相撲だよね?」
カレン「……うん。」
ティナ「……どうする? わたしたち、先に帰る?」
カレン「……一応、あたし達のために戦ってくれてるんだし……
リオナ応援してあげよ?」
ティナ「……そうだね。がんばれー リオナー。」
(リオナとルシル、互いの視線がぶつかり合う。
周囲の空気がピリピリと張りつめる。)
リオナ「次は――わたくしの番でしてよ!」
(リオナ、両手に体重を乗せて一気に押し込む!)
パァァァン!!
(風圧のような一撃。ルシル、ドレスの裾を翻して体勢を崩しそうになるが――)
ルシル「っ……ふんっ!」
(華麗に腕を回し、くいっと上体を立て直す。)
ルシル「リオナ……中々やりますわね。」
リオナ「ふふっ……ルシル様の方こそ。」
ティナ(真顔)「がんばれー まけるなー リオナー」
カレン(真顔)「がんばれー」
(両者、完全に拮抗。押しも引きも五分五分。
緊迫した空気が漂う――)
――その時。
(ふわり、と小さな雪虫が風に乗って飛んできた。)
リオナ「……ちょ、お待ちに……鼻に虫が……」
(鼻、ムズッ)
リオナ「は、鼻に虫が……ハァ……ハァ……」
(リオナの呼吸に合わせて、魔力が共鳴。足元に淡い魔法陣が出たり消えたり。)
ティナ「え、ちょ、魔法反応出てない!?」
カレン「リオナ!? 大丈夫!?」
リオナ「──ブァックション!!ですわぁぁーーーっ!!!」
――ドゴォォォォォン!!!
(暴発。爆風とともにルシル、吹っ飛ぶ。)
ルシル「ぎゃーーっ!? つ、唾が! 唾が顔にぃぃぃぃ!!」
(広場の端でドレスの裾で顔を拭い、絶叫。)
ティナ「……勝ったね。」
カレン「……うん。」
(静かな勝利宣言。)
リオナ「ルシル様っ! 本当に申し訳ありませわ!
お怪我はございませんか!?」
ルシル「……ふんっ! まさか“くしゃみ”で負けるとは思いませんでしたけれど……
負けは負け。あなた方に、謝罪いたしますわ。」
ティナ「あー、いいよ。気にしてないからさ!」
カレン「うん、あたしも! 全然大丈夫!」
ルシル(頬を少し染めながら)「べ、別に……敗者としての務めを果たしただけですわ!
ただ……その……リオナが庶民と一緒に楽しそうにしているのを見たら、
なんだか――むかっ……いえ、気になっただけですの!」
リオナ「まぁ……なんだかんだ、楽しかったですわね、ルシル様♪」
ルシル「っ……ふ、ふんっ! 次はもっと優雅な勝負で、完膚なきまでに勝たせていただきますわっ!」
(くるりと踵を返し、ドレスの裾を翻して去っていくルシル。
だが、馬車に乗る前にほんの一瞬だけ――リオナの方へ振り返る。)
ルシル「……その……今日は、悪くありませんでしたわ。」
(顔を真っ赤にして目をそらす。)
ティナ「……あの子、絶対リオナのこと気に入ってるよね?」
カレン「うん、“遊びたいツンデレ”だね。」
ティナ「ふふっ、かわいいじゃん。」
(三人の笑い声が、夕暮れの街にやさしく溶けていった――)
次回【初冬に現れた右手のお嬢様】
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