10話 湖の奇跡
(朝。鳥のさえずり。湖面を照らす朝日がキラキラと光る)
ティナ「ふぁ〜……昨日は散々な目にあった……」
(布団の中でじたばた)
ティナ「リリサめ……美人エルフの皮を被った悪魔め……!」
(勢いよく起き上がり、釣竿を手に取る)
ティナ「だが! 俺は悪魔に勝った! そしてこれがその勝利の証――釣竿だぁ!!」
(鼻歌まじりに湖へ向かう)
――湖畔の桟橋。朝の空気は少し冷たく澄んでいる。
ティナ「よぉ〜し! 一発大物でも釣って、昨日の羞恥とはおさらばだ!」
(糸を垂らす。湖面が静かに波紋を広げる)
――数十分後。
ティナ「……釣れないなぁ……」
(足をぶらぶらさせながら空を見上げる)
ティナ「そういえば俺、釣り“好き”なだけで上手くはなかったっけ……」
(ため息まじりにリールを巻くティナ)
――そのころ。
(家の窓辺。カーテン越しに外を覗くリリサの姿)
(手には紅茶のカップ。静かに微笑みながら、湖で奮闘するティナを見つめている)
(再び湖畔)
ティナ「もう今日は引き上げ――」
(ググッ!!)
ティナ「わっ!? き、きた!? きたきた!! しかも……でかい!!!」
(釣竿が大きくしなり、糸が右へ左へ暴れる)
ティナ「頑張れ俺! 負けるなティナ!! いっけぇぇぇ!!」
(水飛沫が上がる。光の粒が湖面を舞い――)
ティナ「どりゃあぁぁぁ!!」
(ドンッ!! 桟橋の上に落ちる巨大魚! ティナと同じ背丈の大物!)
ティナ「やったぁぁぁ!! よっしゃぁ!! これぞ努力の成果だ!!」
(拳を突き上げ、大声で笑う)
――窓辺のリリサ。
(カップを口元に運び、ひと口すする)
リリサ(小声)「ふふ……よかったわね、ティナ。」
(優しく目を細める)
――ティナ、魚を抱えて全力疾走。
ティナ「リリサぁぁぁ!! 見てこれぇぇ!! 超大物だぞぉ!!!」
(玄関の扉をバーン!と開ける)
リリサ「まぁ! すごいじゃない! 今夜はご馳走ね!」
ティナ「だろ!? やっぱ努力は裏切らないな!」
リリサ「(クスッ)そうね、“努力”って大事よね。」
――夕刻。
食卓には豪華な魚料理のフルコース。
リリサ「このお魚、煮ても焼いても最高ね。」
ティナ「だろ!? 俺の腕が冴えてたからな!」
リリサ「はいはい、“お姉ちゃんに見守られて”たから、ね?」
ティナ「ん? 今なんか言った?」
リリサ「ううん、なんでもないわ♪」
(2人の笑い声と食器の音が、湖畔の夜に溶けていく)