『これは英雄の物語』
これはプロローグだ。
この物語の終わりであり、物語の始まりとなる話。
いつもは綺麗な場所が、今や血なまぐさい場所へと姿を変えている。
地面には多くのものが倒れており、皆顔が歪んでしまっている。
そしてその光景を、こうして手記に書いている私も、腹部に感じる痛みによって意識を今にも落としそうになっていた。
もうさほどの時間も残っていない。
私は今出せる力を使い、ここで起きた事を綴っていく。
今思えば、私は彼らのために何かしてやれていたのだろうか。
元々この世界の住人ではない私は、彼らにとって邪魔な存在になっていたのではないのだろうか。
私がもしこの世界に来ていなければ、彼らはもっと良い人生を送れたのではないだろうか。
そんな事を今になって思う。
もうどれだけ考えても意味がないというのに、私は罪悪感にかられる。
「……すまない、みんな…」
すでにペンを握る力は無い。
それでもなお、ペンを握り、もう片方の手で手記を持っているのは、まだ書きたいことがあったからなのだろう。
だがもう私にはその続きを書くことはできず、徐々に意識が薄れていく。
ここで私の人生は終わる。
英雄になりたかった人生だったが、どうやら私にはその資格はなかったようだ。
目を閉じ、その時を待った。
そして、英雄になりきれなかった男は、滅んだ王国の城で息絶えるのだった。
英雄というものに、誰しもが憧れたことがあるはずだ。
もちろん、『そんな事一度もない』という人もいるかも知れない。
だが、少なからず誰かに憧れたりはするはずだ。
育ててくれた親、兄弟や姉妹、友人や知人、学校や外の世界で支えてくれた大人たち。
人はそれぞれに憧れる対象は違う。
その中でも、世界的に英雄だと賞賛される者たちは極わずか。
そんな極わずかな英雄たちにも、憧れる対象がいる。
この物語は、一つの手記に記された、とある異世界の英雄たちを追ったもの。
英雄たちがなぜ英雄と呼ばれるようになったのかを記した物語である。
そして、そんな物語の主人公は、我々と同じ世界を生きる、一人の成人男性である。
彼の名前は、樋口 守里。
この物語、手記を綴った著者だ。




