未来の勇者へ 後編
最近太ってきたから、太っていてもかっこいい大人を描いてみました!
楽しんでください!
ズドン!
地を蹴り、ロイドとクレアは一瞬で間合いを詰めた。
ロイドの聖剣が、凶悪な野盗たちを片っ端から吹き飛ばす。
刃は振るわない。柄で殴り飛ばす。地響きが上がる。
巨体に似合わぬ俊敏さ、無駄のない動き。
その全てが“本物”だった。
クレアは剣を手に、舞うように駆ける。
銀色の閃光が描く軌跡。斬りつけた野盗は、そのまま凍りつき、動けなくなった。
「ぐあっ!」
「な、なんだこいつら……!」
「バ、バケモンか!!」
野盗たちは次々と地に伏し、もがいた。
ロイドは聖剣を肩に担ぎ、にやりと笑った。
「悪い事したんだーー捕まる覚悟くらいあるよな?」
野盗たちは、誰一人反論できなかった。
ロイドは振り返り、クレアに顎をしゃくった。
「縛っといて」
「了解」
クレアは淡々と氷魔法を使い、野盗たちの手足を凍りつかせる。
身動きひとつ取れないように縛り上げる。
「これで、しばらくは動けないでしょう」
ロイドは満足そうに頷いた。
「馬車の御者さん!」
ロイドが御者台に向かって声をかける。
御者はおっかなびっくり顔を出した。
「伝令を一人、王都に走らせてくれ。騎士団に連絡だ」
「は、はいっ!」
御者は馬を叩いて、伝令役を送り出した。
ロイドは、うなだれる野盗たちに背を向けた。
そして、ぎゅっと拳を握りしめたまま、じっと立ち尽くしている男の子の元へ歩いていった。
エクスカリバーは静かに光を消し、霧散する。
ロイドは、しゃがみ込んで男の子と目線を合わせた。
「怪我はないか?」
男の子は、ぐっと拳を握りしめたまま、首を横に振った。
「うん」
ロイドは、くしゃりと男の子の頭を撫でた。
「……かっこよかったぞ、勇者様」
男の子は、少し顔を赤らめて笑った。
ロイドは、ほんの少しだけ真剣な目をして続ける。
「でもな、覚えておけ」
「?」
「自分が敵わないと思ったら――ちゃんと逃げることも考えろ」
「……」
「大切な人を守りたいならな」
男の子はきょとんとした顔をして、それから、真面目にこくりと頷いた。
「うん、わかった!」
ロイドは、ふっと笑った。
その顔は、どこまでも優しかった。
立ち上がると、背中越しに声が飛んできた。
「勇者様!」
ロイドが振り向くと、男の子が胸の絵本をぎゅっと抱きしめたまま、ぴょんと跳ねるように近づいてきた。
「ん?」
「サイン書いて!」
差し出されたのは、男の子が読んでいた絵本。
金色の鎧に、聖剣を掲げた勇者の姿が描かれた表紙。
ロイドはにやりと笑い、本とペンを受け取る。
「いいよ」
受け取った絵本をめくり、見開きの白いページにさらさらとペンを走らせる。
【ロイド=バルザック】
――未来の勇者へ
男の子は、目をキラキラさせながらそれを見つめた。
ロイドは絵本を返し、にかっと笑う。
男の子は、両手で大事そうに絵本を抱きしめた。
「うん!ありがとう、勇者のおじさん!」
ロイドは、少し照れたように頭をかきながら立ち上がった。
背後から、静かな足音。
クレアが静かに近づき、ぽつりと呟いた。
「……やればできるじゃないですか」
その声には、ほんの少し、柔らかい色が混じっていた。
ロイドは鼻で笑って、ひらひらと手を振った。
「当たり前だろ。なにせ俺は――」
胸を張って、ロイドは言う。
「勇者様ーーだからな」
馬車は再び、ガタゴトと音を立てて走り出した。
ロイドは、絵本をぎゅっと抱きしめる小さな背中を一度だけ振り返り、
もう一度、にかっと笑って見せた。
物語は、まだ始まったばかりだった
小説書くの初めてです!
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