表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

クレアの本気!!サポーター大実験!

最近太ってきたから、太っていてもかっこいい大人を描いてみました!

楽しんでください!

王都・中央闘技場。


普段は王国騎士の演習に使われるこの場所で、

今日はとんでもない“実験”が始まろうとしていた。


「よし、試してみるか」


ロイドは、新品の“加護付きサポーター”を膝に着用し、確かめるように地面を踏んでいた。


その脇で、技術者風の男が誇らしげに説明を続ける。


「膝の負担を大幅に軽減しつつ、筋骨の補助を行う最新の加護式サポーターです。

それと同時に、身体能力の出力は通常の30%ほどに制限されております!」


ロイドは、ふうん、と生返事をして足踏みを繰り返す。


「30%か……まあ、ちょうどいいかもね」


「とはいえ……」

腕を組むのは、王国騎士団第一部隊隊長、クレア=ヴァレンタイン。


「どれほどの効果があるかは、実戦で確かめるのが一番でしょう」


「つまり、手合わせってやつだな」


「はい。貴方が“動ける”かどうか、確かめさせて頂きます」


そう、これは“戦い”ではない。

勇者のリハビリ、サポーターの試運転、

そしてクレアの“リベンジ”を兼ねた、重要なテストだ。


「じゃあ、いくか」

ロイドが肩を回し、エクスカリバーを召喚する。


「適当に頼むぞ」


「了解しました。八割で行きます」


「ちょっと多くない?」


二人は静かに構えた。


そして。


「行きます!!」


クレアが踏み込む。

氷を纏った剣が唸り、ロイドへと迫る。


「おっと」

ロイドは軽やかに身を捌く。


最小限の動き。

だが、絶対に当たらない間合い。


「……さすが、膝が痛くないと楽だなぁ……」


呑気な声に、クレアのこめかみがピクリと動く。


——次の一撃、また捌かれる。

三撃目も、四撃目も、五撃目も。


「……ッ!」

クレアの額に汗が浮かぶ。


「技術者さん」

ロイドが観覧席に向かって声をかけた。


「これ、ほんとに30%出てる?」


「は、はい!理論上は!間違いなく!!」

慌てて返す技術者。


「ふーん……なんか10%くらいしか出てねぇ気がすんだけど」


沈黙。


「な、なんだと……!」

「バカな! 我々の研究に失敗など……!」

「……ま、待て!誰かデブに試したか!?」

「い、いや、デブにはまだ試してない……」

「もしかして……表面積の問題か!? 」

「くそっ! なんでもっとデブで試さなかったんだ!!」


ロイドはため息を吐く。


「……失礼だなあいつら」


クレアが一歩前に出る。


「……10%、ですか」


低い声が氷のように張り詰める。


「私が……たった10%の貴方に、押されていると?」


氷が咲いた。


それは一振りの剣から始まった。

クレアが地面を蹴り、鋭く剣を振り下ろす。


その軌跡に合わせて、空間が凍てつく。

瞬く間に氷柱が立ち並び、闘技場は銀世界へと塗り替えられていった。


「え?……やりすぎじゃない?」


ロイドが呆れた声を漏らす。

だが、口元は緩んでいた。


「これが、氷剣の女騎士……」

「魔族すら震え上がる“氷の制圧者”……」


観客席の騎士たちがざわめく。


17歳。王国騎士第一部隊隊長。

名門ヴァレンタイン家が誇る才女。

戦場では氷の悪魔と恐れられ、冷酷無比に敵を葬ってきた。


——そんな彼女が、いま、己の全力をぶつけようとしている。


「行きます……!!」


氷の剣が、百本。

それら全てが、ロイド一人に向けて放たれる。


「流石にやばいな……」


そう呟くと同時に、エクスカリバーが蒼白い輝きを纏った。


「うぉぉおおおお……っとおらぁ!!」


ロイドの剣が唸る。

一閃。

その一撃が、氷剣の群れを薙ぎ払った。


だが。


「まだです!」


クレアは止まらない。

氷が、無限に生まれるかのように押し寄せる。


ロイドは捌く。

受け流し、弾き返す。


だが、次第に呼吸が荒くなる。


「はぁ……はぁ……膝は良くても、息が切れるな……畜生……」


膝はまだ動く。

だが、長年の怠惰が蝕んだのは心肺機能。

体力が、続かない。


「ぐぅ……! だが、まだ……!!」


もう一度、踏み込む。


しかし、その瞬間——


「ピキッ」


不吉な音が響いた。


「おっとぉ……やばい。今のは心当たりがある音だわ……」


ロイドの額に冷や汗が伝う。


その隙を、クレアは逃さない。


「これで……終わりです!!」


クレアが振り下ろす巨大な氷剣。

まるで天から降り注ぐ刃そのもの。

観客席からも悲鳴が漏れる。


が――


「はぁ……はぁ……ったく……」


ロイドは右足を踏み込んだ。


ズドン。


石畳が砕け、凄まじい衝撃波が周囲を襲う。

氷剣の軌道が逸れ、その刃先はロイドの頭上を素通りしていく。


そして、ロイドのエクスカリバーがクレアの首元に寸止めで添えられていた。


「っ……」


クレアが目を見開く。そして……


「参り……ました」


ロイドがゆっくりと剣を下ろす。


クレアは唇を噛む。

剣を交えた感触は、はっきりと刻まれていた。


——届かなかった。

全力で、氷剣百本を操ってなお、

彼には届かなかった。

しかも相手は、30%以下に身体能力を制御されている状態で…


「私は……まだまだ、ですね」


顔を伏せたその声は、悔しさと無念さに滲んでいる。


「いや……そんなことないよ」


ロイドの声は、どこまでも呑気だった。

勝者としての余裕?

違う。これは、疲労困憊の男が、ただ本心を漏らしただけの声だ。


「……さ、酸素ボンベ……」


虚ろな目で呻く。

そして、限界は突然に訪れた。


「うっ……!」


胃袋が悲鳴を上げ、ロイドは膝をつく。

その巨体がぐらりと傾き——


「お……オロ、オロロロロ!!」


――ぶちまけた。


無慈悲な嘔吐物が、まっすぐにクレアへと降り注ぐ。


「……ッ!!?」


静寂。

氷の騎士、クレア=ヴァレンタインは、白銀の甲冑を……いや、全身を嘔吐物で染め上げた。


「ロイド様……」


「……ご、ごめんほんと……!」


「殺します」


氷の魔力が爆発した。


氷拳、氷槍、氷ラリアット、氷の鉄山靠。

ロイドの巨体が何度も吹き飛び空を舞う。


観客は誰も止めない。止められない。


ロイドはボロ雑巾のように地面に転がり、かろうじて呟いた。


「……リハビリって……こんなんだったっけ……?」


視界がぼやける中、氷の女騎士が、冷酷に言い放った。


「死ね」


ロイドが返す間もなく、またゲロがこみ上げた。

観客席の誰かが、そっと呟く。


「医務室の準備を……」

小説書くの初めてです!

アドバイス&感想、なんでも教えてください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ