ロイド専用サポーターを作成!
知り合いに読んでもらったら、サポーターを作るとかもあったほうがいいんじゃない?との事なので作ってみました!
――王都・神殿技術局。
そこは神殿直属の研究機関であり、
魔道具の開発、修復、管理などを一手に担う頭脳集団だった。
その一室、白衣を着た技術者たちが集結し、異様な熱気を放っていた。
「よろしいか、諸君!!」
主任技術官が叫ぶ。
「本日これより、伝説の勇者――ロイド=バルザック殿のための【専用サポーター開発計画】を開始するッ!!」
「「「おおおおお!!!」」」
技術者たちがどよめく。
みな目をギラつかせ、手には最新式の測定機器が握られていた。
そして、その中心に――
「なあ、やめない?これ」
ぐったりと車椅子に座らされるロイドがいた。
サンダル、ジャージ、寝癖。見るからにやる気ゼロ。
「いやいやいや、これは国家的プロジェクトですから!」
主任技術官が汗だくで笑う。
「勇者様の膝を完全サポートする義務が我々にはあるんです!」
「いやでもさあ……」
ロイドが顔をしかめる。
「昨日膝壊して今日これって、拷問じゃない?もう少し休んでからでも……」
「ご安心ください!絶対に勇者様が安心して動けるものを作って見せます!」
主任が親指を立てた。
「……ダメだ話通じないわ」
ロイドは項垂れた。
その隣に、無表情で立っていたクレアが口を開く。
「王命です。諦めてください」
「王命って便利だなおい……」
ロイドがため息をついたところで、
技術者たちがわらわらと押し寄せた。
「まずは基礎データを取ります!まずは体重です!」
手慣れた様子で車椅子を測定器に乗せる。
——が。
ピピピピピピピピピピッ!!
異常音が鳴り響いた。
「……体重オーバー!?」
「馬鹿な!最大許容量、250キロだぞ!?」
「どれだけデブなんだこいつは!!」
「ちょっと失礼します!」
技術者が慌ててロイドを別の体重計へ移動させる。
が、そこでも。
ピピピピピピピピピピッ!!
「ダメだ!」
「表示がバグった!」
「体脂肪率計もエラー吐いたぞ!」
「クソ!ダメだデブすぎる!」
「ねぇ、さっきから失礼すぎない?」
ロイドがぼそっと呟く。
クレアが無表情で返す。
「仕方ないです。体重計が壊れるくらいデブなんですから」
「ずっと思ってたけど、きついね君」
ため息混じりに返すロイド。
しかし、技術者たちはめげない。
「次は膝の圧力テストです!」
と、ロイドの膝に分厚い金属プレートをセットする。
「このプレート、王国随一の鍛冶師が鍛えた特製品です!
絶対に壊れません!」
技術者の一人が胸を張った。
「じゃあいきますよ!勇者様、軽く膝を曲げてみてください!」
「へい……」
ロイドが慎重に膝を曲げる。
——ミシミシミシッ!!
「え、嘘だろ……!?」
「待って!!待って待って待って!!
金属が歪んでる!!」
「おいおい、冗談きついぜ……」
「無理ですって!これ、馬鹿力すぎる!!」
——やがて。
金属プレートはミシミシと嫌な音を立て、ついにはバキィッと小さな亀裂が入った。
ロイドが膝を伸ばしてそっと言う
「え?そんなに力入れて無いよ……」
数時間にわたる悪戦苦闘の末、
技術者たちはようやく結論を出した。
「……まとめます」
主任技術官が重々しく言う。
「勇者様の膝に耐えられる素材は、王国には存在しません」
「「「…………」」」
数時間にわたる悪戦苦闘の末、
技術者たちはようやく結論を出した。
「「「…………」」」
沈黙が落ちる。
「え?……どうする?」
ロイドが呻くように言った。
主任技術官たちも顔を伏せ、万策尽きたかに思えた――そのとき。
一人の若手技術者が、ぽつりと呟いた。
「……ちょっと待ってください」
その声に、場が静まる。
主任が眉をひそめた。
「……何だ若造」
若手技術者は、おずおずと、それでも真剣に言葉を続けた。
「我々は今、勇者様の体重、身体能力に合うサポーターを開発予定ですよね?」
「ああ、そうだ」
主任が険しい顔で頷く。
「しかし、それが無理だった。勇者様の体重と身体能力は、我々の理解を超えていた」
ロイドは、梅干しを食べたみたいな顔でうなずいた。
「……なにが言いたいのですか?」
クレアの冷たい声が飛ぶ。
若手技術者は、拳を握りしめた。
「ならば、逆転の発想はどうでしょう?」
「逆転の発想?」
「はい!」
若手は力強く言い切った。
「勇者様の身体を支えるサポーターではなく、勇者様の身体能力を“抑制する”サポーターを開発するんです!」
技術者たちがざわめく。
「抑制……?」
「つまり、強化じゃなくて、制御?」
「身体能力をセーブして膝の負担を減らすってことか!」
主任の目がカッと見開かれた。
「……!!」
「……それだ!!!」
ドン、と机を叩く。
「考えてみろ!あのデタラメな筋力と体重、普通に動けば膝が壊れる!」
「なら、最初から力を抑えてしまえば、膝にも負担がかからない!!」
「先程測定した筋力データを下に無理なく動ける出力に制限すれば……!!」
ロイドが半目で言う。
「それ、俺、弱くなるって事?」
クレアが即座に返した。
「みたいですね、ですがとても合理的です」
「……そうですか」
技術者たちはすでに動き出していた。
「リミッター式、いけるぞ!」
「膝サポーターに魔術刻印で出力制御!」
「筋肉収縮を物理的に制御する特殊繊維を使おう!」
「制御装置と衝撃吸収のハイブリッド構造!」
「負荷センサーも搭載して、一定以上の力がかかると自動でロック!」
ロイドが耳を塞ぎたくなるような単語が飛び交う。
「……なあ、俺、これ死なないよな?」
「大丈夫です!」
主任が親指を立てた。
「仮に制御に失敗しても、膝が先に壊れるだけなので!」
「いやこえーよ!」
技術者たちは歓声を上げ、各自作業に散っていった。
ロイドは車椅子の肘掛けを握ったまま、深いため息をついた。
「……どうしてこうなった」
クレアが静かに言う。
「貴方が太って膝を壊しているからです」
「うるさいよ!わかってるわ!」
——数日後。
完成したのは、銀色に輝く膝用サポーター。
重厚な装飾と魔術刻印が施された、工芸品のような逸品だった。
ロイドは立ち上がり、
そっと膝に装着する。
ぴたりと馴染むフィット感。
今までにない安定感。
そして――
「……おお」
「おお、って言ったぞ!」
技術者たちが大歓声を上げる。
「勇者様が“おお”って言ったぞ!!」
「やった!大成功だ!!」
「革命だ!!」
ロイドはサポーターを見下ろし、苦笑した。
「……悪くない、かもな」
「では」
クレアが淡々と続ける。
「これで手合わせをしましょう」
「え、今すぐ?」
「当然です。
実戦で確かめましょう」
ロイドは観念したように肩をすくめた。
「やれやれ……。
じゃあ、ちょっと軽く動くかぁ」
小説書くの初めてです!
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