英雄の帰還?
最近太ってきたから、太っていてもかっこいい大人を描いてみました!
楽しんでください!
――王都・王城。
玉座の間は、どこか異様な空気に包まれていた。
魔王軍との戦いは苛烈を極め、もはや国の命運すら危うい。
重苦しい空気の中、王は玉座に沈み、震える手で王笏を握っている。
「……ロイド=バルザックは……まだか……」
その声には、かつての威厳も力もなかった。
その時だった。
「勇者、到着いたしました!」
厳かな宣言。
玉座に座る王は、食い入るように扉を見つめた。
そして、次の瞬間。
ズズズ……と、異音が鳴る。
担架だった。
「な、なにごとだ!!」
王が身を乗り出す。
運ばれてきたのは、どこからどう見ても【瀕死のオッサン】だった。
無精髭。ジャージ。サポーター。顔色は悪く、サポーターで固定された膝を庇うように、担架の上でくの字に曲げ、呻き声をあげている。
「……ロイド=バルザックでございます」
「な、勇者よ!!何があった!?魔王軍に討たれたのか!?」
王は焦り、玉座から駆け寄る。
「違います」
ぴしゃりと冷たい声が割り込む。
「勇者殿は、前線にて魔王軍の先鋒を壊滅させました」
クレア=ヴァレンタイン。
王国騎士団第一部隊隊長が、いつもの塩顔で淡々と報告する。
「……なんだと?」
「王国軍全軍が確認しております。聖剣エクスカリバーによる一閃。魔王軍は撤退。王国軍、勝利でございます」
玉座の間がどよめく。
「勝った……のか?」
「勝ったぞ……!!」
「我が王国が……!」
歓喜が広がる。
だが。
「代償として、勇者は重傷を負いました」
クレアの言葉に、玉座の間が静まり返る。
王は、ゆっくりと勇者のもとへと歩み寄る。
担架の上で、ぐったりと寝転がるロイドを見下ろし――
「おお、勇者よ……」
その声は、まるで親が我が子を労わるかのように震えていた。
「ここまで……ここまで身体を張って……!
たとえ命を落とすことになろうとも、王国を救わんとするその姿勢……
まさしく……まさしく貴殿こそ、真の英雄だ!」
王は感動のあまり、涙を流し、手を震わせる。
「そなたは……王国のために、その身をもって犠牲となったのだな……!」
「……事実を申します」
そこに、クレアの冷徹な声が割って入った。
「勇者殿は、自身の“体重”により、膝が耐えられなかっただけです」
王「…………」
宰相「…………」
兵士たち「…………」
沈黙。凍りつく空気。
目の前の現実を理解しきれない王の顔が、ぴくぴくと引き攣っていた。
「……体重?」
呆然と呟いたその声に、もはや国の主君のものではなく、ただの子供のようだった。
「だがそれでも!!」
王は震える手で勇者の腕を握り、無理やり声を張り上げた。
「膝が砕けようと、腰が軋もうと!それでも敵を討ったのだ!!
それこそが勇者ではなく、何だというのだッ!」
「痛い!痛いって!揺らすな!」
担架の上でロイドが情けなく叫ぶ。
「貴殿のその献身……王国の誇りよ!」
王は涙すら浮かべ、続けた。
「よって、ロイド=バルザック。
そなたに改めて命じる。
膝が癒え次第――魔王討伐をお願いしたい!」
「うわ!やっぱ出たよ!俺ほんとに嫌なんだけど!」
ロイドは天井を仰ぎ、心底嫌そうに呻く。
「動けたとしても長続きしないって!前線で見せたじゃん!なんでまだ期待してんの!?」
「案ずるな!」
王は拳を握りしめ、誇らしげに叫ぶ。
「王国神殿に命じ、そなた専用の【最高のサポーター】を制作させよう!
二度と膝が壊れぬよう、万全を期すのだ!」
王が高らかに言い放つたび、手をぶんぶん振り回す。
その腕は当然ロイドを掴んだまま。
「痛い痛い痛い!おい、マジでやめろ!わかった!わかったから!」
「その言葉、しかと聞いた!」
王は喜色満面で玉座へと戻る。
「この王の名に懸けて必ずや用意しよう。
貴殿が再び立ち、魔王を討ち果たす為にな!」
玉座の間は歓声に包まれていた。
王も、騎士も、民も、みな“英雄”の帰還に酔いしれている。
だが、その中心にいる男だけが、
ひとり静かに疲弊していた。
「……どうしてこうなった」
こうして、王国を救った伝説の勇者は――再び戦場へと担がれることになったとさ。
小説書くの初めてです!
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