勇者だと思ったらデブが来た!
最近太ってきたから、太っていてもかっこいい大人を描いてみました!
王城は、すでに戦場の空気だった。
城壁の外では魔王軍が迫り、
城内では、王と高官たちが顔面蒼白に震えていた。
王国軍の兵たちは、もはや兵士ではなかった。
目は死に、槍は震え、誰もが絶望を噛みしめている。
玉座の間。
かつて栄光と威厳を誇ったその場所も、今やただの避難所だった。
王は、玉座に沈み、
死に損なった老人のように、
震える手で王笏を握っていた。
「ロイドは……ロイドはまだか……」
その声には、もはや王の威厳も希望もなかった。
その時。
扉が静かに開く。
「……陛下、連れて参りました」
クレア=ヴァレンタイン。
王国騎士団第一部隊隊長。
瓦解した王国軍の中で、唯一冷徹さを失わなかった女騎士。
王は、震える目で扉を見た。
そして、絶望を深めた。
サンダル、ジャージ、寝癖のデブが立っていた。
腹は出て、顔は無精髭、
膝には分厚いサポーター。
「…………」
「…………」
「…………」
王も兵士も宰相も、誰も声を出せなかった。
かろうじて、王が絞り出す。
「……誰だ、これは」
ロイドは、頭をかきながら面倒くさそうに答えた。
「え、俺だよ。ロイド=バルザックだよ」
「…………」
「いや、マジだって」
「違う……
違う違う違う!!
私の知るロイド=バルザックは!もっとこう……神々しく!荘厳で!屈強で!!」
取り乱す王に、クレアが淡々と告げる。
「ご安心ください。本物です」
「……これ?」
「はい。実力においては、私を遥かに上回ります。
……一瞬ですが」
「……一瞬?」
クレアは、事務的に言い放つ。
「この勇者、現在は膝を壊しておりまして。
長時間の戦闘は困難かと」
「膝を……そうか、過去の戦いで受けた傷か」
「いえ。フットサルで負傷したそうです」
王は、崩れ落ちた。
「……終わった……
我が国は……もう終わりだ……」
ロイドは、面倒くさそうにため息をつく。
「まぁ、そんな感じで
動けるのは一瞬だと思う。
だからあんま期待すんなよ。」
「……」
黙り込む王。
クレアは、無表情で冷酷に宣言する。
「こんなデブでも元勇者です。
最後に賭けてみましょう。」
「デブは酷くない?」
「酷くないです。事実ですから」
「……きっつ」
王は、顔を覆ったまま、うめくように呟いた。
「終わった……
本当に終わった……」
ロイドは、ため息と共に肩をすくめる。
「……そうだな。
じゃあ、いっちょやってみるか」
その言葉に、クレアは一歩前へ出た。
わずかに、拳を握りしめて。
「……本来なら、
私が王国騎士長として、貴方など頼らず、
自ら魔王を討つべきでした」
その声は、いつもの冷酷さとは違っていた。
震えるほどに静かで、
だが確かに、悔しさと誇りを帯びていた。
「ですが、私では力不足でした。
……ですから」
彼女は、頭を下げた。
「ロイド=バルザック様。
この王国を、助けてください」
沈黙が落ちる。
王も兵士も、言葉を失った。
ロイドは少しだけ目を細めた。
その瞳に、どこか懐かしさの色が滲む。
「……ふ。さっきまで人にデブデブ言ってたやつとは思えないな」
クレアは、すぐに顔を上げ、
いつもの冷徹さに戻る。
「事実ですから」
ロイドは、思わず吹き出した。
「うるせーよ!……けどまあそうだな……」
ロイドはクレアの頭に手を乗せて言う。
「任せろ」
その瞬間、
王国の運命は、
膝痛デブの元勇者と、
不器用な誇りを抱えた女騎士に託された。
小説書くの初めてです!
アドバイス&感想、なんでも教えてください!