神様パワーは万能だね
みなさんこんにちは。私の名前は「日澄 茉緒ひずみ まお」です。社会人3年目のOLです。上司も同僚も後輩もみんないい人でホワイトな職場だなと思います。毎日定時に帰って、たまに職場のみんなで飲みに行って…1日が過ぎていく。そんなどこにでもいる社会人の私が人に話せる自分の個性はそう、
恋愛漫画だ!!
学生時代から今に至るまで星の数ほどのありとあらゆる恋愛漫画を読んできた。もちろん女の子同士の恋愛や男の子同士の恋愛の漫画もである。そのため今現在一人暮らしをしている私の部屋は漫画が溢れかえっている。厳密に言うと漫画のタワーが部屋のあちこちにできている。まぁ、気が向いたときに片付けたらいいか。なんてこのときの私は呑気に考えていた。
この選択が私の人生を大きく変えてしまうなんて知らずに
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「あれ…ここどこ」
目が覚めると真っ白なところにいた。天井も床も壁も全部真っ白だ。
…ゑ?私死んだ?ここ死後の世界??天国?地獄?それともy「こんにちはー!」
「ヒッ」
いつのまに前にいた人?に話しかけられた。あらやだイケメン。もしかけて天使?よく見たら服装もなんか神様とかそんな感じのデザインだし。天使か。うん、そうだきっと。
「あのー、聞いてます?」
「え、あすみません。全然聞いてなかったです。」
「でしょうね。今からもう一度話すのでよぉぉく聞いといてくださいね!」
「はい…よろしくお願いします。」
申し訳ないことをしてしまった。
…にしても顔いいな。
~説明中~
「あ、あたしが神様??」
「はい!」
「いやいやいや、おかしいですって。私一般人ですよ。」
「はい!」
「というか、神様っていっぱいいるでしょ。なんでわざわざ人間の私なんですか?」
「最近、人間のみなさんが好き勝手しすぎてこちらも対応が大変なんですよねぇ」
「あー、なるほどぉ…」
なんでだろう、私が叱られている気がする。
「これまで世界を管理していた神様の方たちがみなさんガンギマリでそれぞれの世界の問題を解消する為に作業されていまして、そのせいで色々な世界の愛する人と幸せになる人間のみなさんを見守ることができている神様が全然いなくてですね…そこで、本来死ぬはずだった人間の中から1番この係に向いてそうな方を選んだ結果あなただったんです!」
「まって、私死んでたの!?!?」
「はい、漫画と本棚に埋もれて亡くなられたと担当部署の神様から聞いてますよ」
まじかー。いや、薄々そんな気はしてたけど。なんか呆気ない人生だったな。
「ということで早速今から作業をしてもらえますか?」
「えーっと、その具体的に私は何をすればいいんですか?」
「そうですね。こちらのモニターから映っている人間の方々の様子をみていただいて、あなたが思うハッピーエンドを迎えることができたら次の人間の方々の様子を見守ってください。これを繰り返すだけです!」
「…随分ざっくりとしてますね」
「やってみたら分かると思いますよ!」
「はぁ」
「それではマオさん、これからお互い神様として頑張りましょう!」
こうして私は神様となった。
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私の仕事内容は思ってたより簡単だった。空中に浮いてるモニターから人間たちが愛している人と幸せになるまでを見守るだけ。見終わるタイミングも自分が見ていて丁度いいときに別の世界の子達に切り替えてまた見守る。
「いや、最高すぎないか?」
私は人の恋愛を見るのが好きだ。そんな私からすればこんなの娯楽でしかない。
なんてことを考えていると真っ白な空間の中からフワッと誰かが現れた。
「調子はどうですかー?マオさん」
「バロンさん!私、今とても幸せです!!」
「上手いことできてるようですね、良かったです。」
最初に声をかけてきたイケメンはバロンという名前らしい。名前までイケメンとは…イケメン恐るべし……じゃなくて!バロンさんに聞きたいことがあるんだった
「あの、1つ疑問なんですけど」
「はい?どうかしました?」
「どうして、人間の恋愛模様を見守る必要があるんですか?」
私に与えられた役割は簡単に言えばただモニターから人間を見るだけ。こちらからなにかする訳でもない。なら、誰かが見守る必要はあるのだろうか。
「それは、」
…ゴクリ
「神様だって癒しが欲しいからです!」
「…へ?」
「人間は私たちが作り上げたのですから人間の方々で言う母性が目覚めてかわいく見えるんですよねぇ」
「なるほど。でもそれじゃあ私が見守っても意味ないんじゃないですか?」
「他の神様にマオさんの目は繋がっているので問題あるませんよ!」
「…へ?(2回目)」
「『マオさんの目を通して人間の方々を見ると、とても綺麗に見えるー!』と先程神様のみなさんが言ってました!」
「あ、ありがとうございます?」
「ちなみにマオさんの目が共有されるのはモニターをみているときだけなので安心してください!」
何言ってるのか訳わかんないけど詳しく聞いても分からない気がするしもうこの話をするのはやめておこう。
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今日も今日とてモニターの前で人間のみなさんの恋愛を覗かせてもらってます。マオでーす。死んで神様になってから数日?数週間?数ヶ月?うーん分からん。というとこの神様の世界には時計もなにもないため時間の感覚がバグる。現に私もバグり散らかしてるし。真っ白な世界に浮かぶ金持ちの家に置いてるテレビぐらいあるモニター。実に殺風景。ということで私は今日この場所をより快適に過ごせるように改造する。
…と言ってもこの世界に家具とかそういう物があるのだろうか。いや待てよ。私は今神様だ。神様なら家具を生み出すことぐらいならできるんじゃないか!?物は試しだ、まずはふかふかのデカイソファが欲しい。白くて、座ると程よい硬さと柔らかさのフワフワでふかふかのでかいソファ。
ソファソファソファソファ…
ポンッ
「や、やっったぁぁぁ!」
理想のソファがモニターが見えやすい丁度いい位置にできた。この調子なら私の天国を作ることもできる!
「燃えてきたァァァ」
それからマオはひたすら神の力を使った。
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「マオさーん!この神様の世界についてはまだ余り知らないと思うので教えに来ましたー!…ってあれ?」
「あ、バロンさん。いらっしゃーい!今お茶いれたところなんですけど良かったらどうぞ!」
「え?お茶?」
「この紅茶すんごい美味しんですよー!人間の頃もよく飲んでたんです。」
「そうなのですね…じゃなくてなんですかこの空間は」
「神様パワーです!」
「か、神様パワー?」
「はい!己の理想を詰め込んだ結果こうなりました!」
元々白い空間にモニター1つだったのが私の神様パワーでまるでセレブの家のような空間になっている。ちなみにモノクロで家具はまとめてるよ!
「よく分からないですけど、マオさんが楽しそうならいいです」
なんかムカつくなその言い方…そうだ、アレでバロンさんをギャフンと言わせてやろう…!
「バロンさん、ちょっとまっててください」
「?はい分かりました」
ソファから立って少し先にある台所コーナーに行く。本当は私1人で全部食べたかったけど…しょうがない。感謝しろよバロンさん。
白いお皿にのせてフォークと一緒にバロンさんのところに持っていく。
「お待たせしました」
「いえいえ、大丈b…
マオさん、それはもしや…」
「はい、ケーキですっ!」
「!!!」
「ケーキ知ってるんですか?」
「人間のみなさんのことはある程度分かってるので…でも本物は初めて見ました」
「自分で取り寄せて食べたりしないんですか?」
「神はお腹が空きませんからね、そんな発想はありませんでした」
確かに、私もまったくお腹は空かないな。美味しいからスイーツは食べたくなるけど。
「頂いてもいいのですか?」
「はい!パクッと食べちゃってください!」
「それでは、お言葉に甘えて…」
パクッ
「どう、ですか?」
「…」
もしかして口に合わなかった!?しょっぱい系の方がよかったのか?今からポテチでも神様パワーで生み出した方がいいかもぉぉ!私のバカッ!誰もが甘党じゃないことぐらい考えたら分かるのにぃぃ!
「…あのぉ、バロンさん?甘いのムリな方でしたか?」
「…し…です」
「え?」
「おいしいです!!この生地のフワフワ感とホイップのとろーりした甘さが相性抜群ですし、そこにいちごが入ることで甘さを中和してくれていて、これは神と言っても過言ではありませんっ!!」
びっくりした。急に早口で話し出したし、神と言っても過言ではないって神様本人がそれ言うか?でも気に入ってくれたようでよかった。
「マオさん!ケーキを教えてくれてありがとうございます!あなたは私の恩人です」
「なんで泣いてるんですか!?」
「あまりの美味しさに感動してます。うぅ」
神様って涙流せるんだな。
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「先程は取り乱してしまい申し訳ないです」
「いえいえ、ケーキ美味しいですもんね」
「気を取り直して、お話させていただきます」
「はい。この世界についてですよね」
「そうです。まず、この世界にはカタチがありません。どこまでも真っ白です。ですが空間の境目はあります。今私たちがいるこの場所も境目があるので知らない誰かが勝手に入ってくることも無いのです」
「なるほど」
「私がマオさんのいるここへ入ってこれるのはイメージをして転移しているからです。転移することでここにいる神様は色んな場所に移動できます。」
要するに神様の移動手段はテレポートというわけか
「そして最後にこの世界にいる神様について説明しますね。今私たちがいるのは主に人間を担当している神様がいるところです。少し遠く離れたところには川や海や森などを担当している神様達や災害を担当している神様達、犬や猫などの動物を担当している神様がいます。」
「自然を担当している神様達などのところに行くのはできないんですか?」
「行くことはできるんですけど、担当が違うと関わらなくても問題ないのでわざわざ行く必要がないという感じですね」
「そうなんですね」
「大体分かりましたか?」
「なんとなくですけど…」
「それならよかったです。正直私も細かいことは分かっていないのでなんとなくでも分かっていれば問題ないですよ!」
ごめんなさいバロンさん、マジで何言ってるのか分からなかった。なんとなくといってもすぐに消えてしまいそうなくらい理解してないのよ。
「あの、マオさん…えと…その…」
「はい、どうしました?」
「ケーキ、おかわりとかってありますか?」
愛しのケーキ達…そうだよな、平凡な女に食べられるよりイケメンに食べられるほうがケーキも嬉しいよな。
「黒い冷蔵庫の中にいっぱい入ってるんで好きなの取ってきていいですよ」
「ほんとですか!?ありがとうございます!!」
イケメン恐るべし…
ケーキ美味しいよね。ちなみに私はチョコケーキが好きです。