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世界が変わった瞬間3

よろしければ、読んで下さい。

今回で完結です!!

 一年前、正太郎は一人川原で佇んでいた。当時正太郎は十九歳だったのでまだ召集令状は来ていなかったが、戦争が長引けば軍務につかなければいけないかもしれない。その事が、怖かった。怖いと思う事に引け目も感じていた。

 「あれ?正太郎さんじゃないですか」

通りかかった雪子が話しかけた。当時、既に雪子とはよく話をする仲だった。

「どうしました?こんな所で」

正太郎の側に来た雪子が聞いた。正太郎は、ぽつりぽつりと自分の気持ちを話し始めた。

「……戦地に行きたくないと思うのは、死にたくないと思うのは、やはり駄目な事なのだろうか。……俺は、非国民なのだろうか」

 雪子は、笑って答えた。

「いいじゃないですか、非国民でも。……周りに知られなければですけど」

「え?」

「誰だって、本当は死にたくないんです。そう思うくらい、いいじゃありませんか。……正太郎さん、悩んで下さい。悩んで悩んで、悩みまくって下さい。そして、悩むのに疲れたら、その時は……笑って下さい」

 正太郎の世界が変わった瞬間だった。


 「……正太郎さん、私に惚れてる素振りなんて微塵も見せてなかったですよね」

「十五歳かそこらの女の子に懸想しているとか言えないだろう」

「私の勉強の世話ばかりしてるから、てっきり妹のように見ているのかと」

「……お前の勉強をみていたのは、母に言われたからだ」

 正太郎が雪子に惚れているのを薄々気付いていた聡子は、ある日正太郎に言った。結婚したい相手が出来たら、その人を守れるよう、教養を身につけなさいと。そして、相手の女性が正太郎の隣に立った時その女性が引け目を感じないよう、相手の女性にも教養を身につけさせなさいと。

 「……はあ。そういう事だったんですね……」

「急に将来だの結婚だの言って悪かった。嫌だったら、忘れてくれ」

「いえ。……正太郎さん」

「何だ」

「私、将来、看護婦になりたいと思ったんです」

正太郎が以前、雄介の手当てをしたのを見た時から考えていた事だ。

「今の学校を卒業したら、看護婦になる勉強をしたいと思っています。だから、もし私が看護婦になって、その時まだお互い好きだったら……結婚して下さい」

「ああ、わかった」

正太郎は、穏やかに微笑んだ。

 

 今この部屋には、正太郎の父親がもらったという中古の蓄音機がある。正太郎は、雪子が持ち込んだレコードをかけた。

 『子犬のワルツ』を聴きながら、雪子は思った。『野良犬のワルツ』ではなく『子犬のワルツ』が似合う女性になってみせると。


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