第6話仲間 ―パーティ―
「ククク……滑稽じゃの、沙久間零人。お主のその怯えた顔嫌いではないフフ」
「くっ!?」
なぜ俺の名を……こちらの世界での俺の名前はレイト、ただのレイトであり現世で使われていた苗字などこの世界で誰も知るはずがない。
__ましてやこの、初めて会ったコイツなんかが。
「何が何だかわからぬと言った感じじゃな?レイト」
なぜ俺の名前を知っている……こいつが知っている理由を考察するならば、考えられるケースは大きく分けて二つだ。
・一つ、こいつが魔法やスキルの類で俺の記憶を読み取り俺しか知らない情報を開示する事によって俺の動揺を誘った。
・二つこれはあまり考えたくないがコイツの言うとうりコイツあぁ、ヨグだったか、その邪神様であるヨグが本物の神の力を保持する者である可能性。
__「どっちだ」
そして、イレイアは横から俺達の私語を見守るしかできない様子でこちらを伺っている。
「レ、レイト!!」
「大丈夫だ、イレイア!! ヨグには多分殺意は無い」(そう、確かに殺意は無い。しかし何を考えているのかも分からない、そしてさっき剣を触れただけで風化させる能力からして、魔力も凄まじい。こんな危ない相手イレイアに近づける訳には行かない)
「人間、いくらその小さい器に入っている足りぬ脳みそで考えても結論は出ないぞ? 我は貴様らが幾ら努力しても及ばぬ遥か高い次元に立っている」
幼女な邪神が俺を冷たい視線で見下しながら俺に語りかけてくる、まるで心を見透かれている様だった。
「読心術か? いや……はたまた魔法の力か、はたまたエクストラスキル? 神とは信じたくない」ヨグは目をつぶりながら腕を組み淡々とした口調で俺がさっきまで頭で思っていた事を全て口にした。
『__!?こ、コイツ!!』
「だからいっとろうが、我は『邪神』だと全て分かってしまうんじゃ未来や過去さえもな」
ペロっと舌なめずりをして俺を真っ直ぐみるヨグ。
「はぁ、分かったよ……凄い凄い、お前は邪神な了解。」
『のじゃ!? 折れたァ!!』
「あれ? お前未来見えんじゃなかったの?」
先程まで威勢の良かった邪神が急に取り乱し、未来が見えるのに俺の発言に動揺すると言った矛盾をヨグが見せた。
「ぐぐ、……貴様…今、運命を」
「はぁ? 何言ってんのお前」
「ははは!! 面白い気に入った人間、いやレイト」
「我をパーティに入れてくれ」
「え、」
「え、」
『……ええええええ!?』
邪神ヨグ・プラム・ソトースがレイトを認め自ら仲間に加わりたいと懇願してきた、何やら本当に敵意はない事が分かった為、戦力の大幅な強化を見込める為、俺達はこのよく分からない『邪神』ロリっ子娘をパーティに迎える覚悟を決めた。
__もちろん、敵意の無い証拠、誠意をヨグはイレイアと俺に見せてくれた。
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「入れてくれないのかの? この妖艶な我美貌、そしてこの強さ、知識どれをとっても文句無いじゃろ」
「信じられるわけないだろ……何処の馬の骨とも分からないやつをパーティに加えるなんて」
「ええ、そうよ」イレイアもレイトと同じ意見であり、同調した。
「んー、信じてくれんのか……それじゃ残念じゃが、お主らここで潰れて死亡じゃの」
「バッドエンドじゃ!! ハハハ!!」
「え、今なんて……」
__ゴゴゴゴ、ゴゴゴゴ。
「ちょ、レイト!! ヤバいわよこの揺れは!!」
レイトの背中に冷や汗が伝った。
『崩落』頭にこの二文字が浮かび生命の危機を感じる。
「あーーあ、残念じゃのぉ〜お主たちがさっき我を仲間にすれば転移魔法が使える唯一の仲間じゃったのになー〜、あーあ。ざぁんねんじゃぁ〜」
ヨグが皮肉を込めブツブツ言い、こんな事態なのに更に口笛まで吹き始め煽り性能もMAXな邪神。
「くっ、このメスガキ邪神が……」
「レレレ、レイトぉ〜ヤバいわよこのままじゃ本当に……妖精の力を借りてもこの距離じゃ……」
「ん、じゃあの!!」
__シュピン!!
「あっ、てめ!!」
俺達に仄めかしていた、転移魔法で、ヨグが一瞬で姿を消し跡形もなく姿を消してしまう。
「うあーーんレイトぉ私まだ死にたくない〜」
いつも冷静なイレイアが死の恐怖から取り乱す。
「くっ、イレイアァ!!」
__むんず
不安に襲われているイレイアを咄嗟にレイトは抱きしめた、「ん、この感覚……」 柔らかい物が当たり、崩落によってピンチであるはずのレイトはこんな事を呟く、「あぁ、死ぬ前に美少女と柔らかい物と死ねるなんて素晴らしいじゃないか」と。
「こんな時に……このバカレイト!! 先に死ね!!」
『グハッ!!!!』またもレイトは気絶しそうになる。
__シュピン
「お主ら〜イチャイチャするのも良いが、このままだと本当に死ぬぞぉー〜」先の程転移した筈のヨグが現れる、しかし。それは上半身だけであり下半身はワームホールに使っていて見えない。
「げ!」
「ひゃあ!!」
俺達に向かってヨグは語りかける。
「一緒に飛ばぬか?」
ワームホールに頬ずえを付いてニッコリ、ヨグが笑いかける。
「ぐっ……」
もうこれしかないとレイトは差し伸べてきたヨグの手を掴むしか選択が無かった。
__スッ
「待つのじゃレイト ストップ!! さ、先に契約するのじゃ」
「さ、早う我と貴様のパーティ契約を」
「クソ、よろしくな!! 邪神さんよぉ!!クソッタレ!!」
切羽詰まった、レイトはここ『ランバル高原始まりのダンジョン』で邪神ヨグ・プラム・ソトースとパーティの契約を交わした。
「良かろう!! 貴様らの命救ってやろうまた、未来が変わったのレイト、やはりお主は面白い」
「あ? ああ」また意味深なことを言い放つヨグ。
「それじヨグ、早く飛んでくれると助かるんだが」
「ヨグはやめてくれ、レイト、我の渾名はプラム、そう呼んでくれると我は嬉しいのじゃ」
「あぁ、分かったよ、よろしくな!!プラム!!」
「フハハ!! 我に敵無し!!我は最強 発動!!転移魔法_テレポーテーション_!!」
__シュピン!!
レイト、イレイア、プラムを含む3人を対象としてたちまちワームホールが三人を包みダンジョンの外まで一瞬で移動した。