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一番目は知性、二番目は美貌、三番目の娘は思いやりってねえ、私はみそっかす三番目そんな私達姉妹に婚約破棄された女好き王太子の婚約者にと話が来て私はそれが嫌で薬草師になるために家出したのですが。

作者: 由緒

 一番目は知性、二番目は美貌、三番目は誰よりも優しい思いやりを持った令嬢。

 子爵の家は安泰だ。


 でもそれって私には何のとりえもないってことですわよね。


「思いやりというものは大切だと思いますわ」


 四番目のミレーユがいいますが。あなたは家の跡取り、私は持参金さえ出るか微妙な三番目ですわ。


 私は子爵の家で一番の思いやりを持つといわれていました。

 でもエメリー、ルシル、マデリー。お姉さまたちの名前は知性の女神、美しさの女神からとられていましたが。私の名前は祖母の名前をそのままもらっただけでした。

 下に行くほど扱いは雑になるとミレーユが言っていましたが、ミレーユは年の離れた末っ子でかわいがってもらってますわ。


 一番目のエメリーお姉さまと二番目のルシルお姉さまと私は一週間前大喧嘩をしましたわ。

 当代きってのおバカ王太子が婚約破棄され、次の婚約者が見つからないということで、20歳から14歳までの年頃の令嬢がいる貴族の家に話が回ってきてました。


 絶対に嫌です! と皆で喧嘩をして、ミレーユがぼそっとならこうすれば逃れられるのでは? という話に私たちはのったのですわ。

 一番目のお姉さまは修道院に出家、持参金で還俗する! と言っていました。

 二番目のお姉さまは適当な貴族の家の次男を捕まえて婚約しました。

 私、私は?


「うふふ、自由。自由ですわ!」


 私は薬草師になりたいと常々思っていましたので、へそくりを持って家出しましたの。

 三番目なんて持参金さえろくにだせないって聞きましたし、知性あるお姉さまは聖女として修道院に入り、二番目のお姉さまは美貌があるから男をひっかるなんて簡単でしょうが。

 私は手に職つけて独り立ちしか道はないのです!


「お腹……すいた……」


 私は薬草師の師匠につくことができて修行することになりましたが、森で採集をしているときに、行き倒れの同じ年くらいの男の子を拾ってしまいました。


「パンならありますけど」


「ありがたい……」


 銀の髪に青い目のきれいな顔をした子でしたが、どうも薄汚れてました。

 パンをのどの詰まらせたのを見て、はい水と水筒を差し出すとごくごく飲んでますわ。


「あなたどうしてこんなところに?」


「あ、あんがと、俺はクリスト、隣国ルーディアから薬草師になりたいと思って、バルカスって人のところまで行こうと思ったけど道に迷ってさあ」


「お師匠様ならこの先の小屋に住んでますわ。私のお師匠ですの」


「それはありがたい、いやあの……」


「押しかけ弟子はでも師匠、たぶん取りませんわ。私、一応お師匠様の親戚で特別に弟子にしてもらえましたの」


「はあ? そうなのかまいったな」


 頭を掻くクリスト、私と同じ14歳だそうですわ。でも隣国って魔法が発達しているから薬草師なんて需要がないのにそれを目指すなんて珍しい。


「……あんたバルカスさんの親戚か、俺を弟子にしてもらえないか口をきいてもらえない?」


「あんたじゃなくてマデリーですわよ。お師匠様は親戚といってもお母さまのいとこのはとこの息子さんですわ」


「遠すぎるだろそれ……」


「まあそうですわね」


 薬草師にあこがれて、幼いころから遊びに行ってましたのよね。バカ王太子の婚約者になんてなりたくないって泣きついて無理やり弟子にしてもらえましたし。


「うーん頼んではあげますわよ。困っているようだし」


「ありがと、マデリーは優しいな」


「優しいって言葉嫌いですの」


「え?」


「それしか取り柄がないってことですし」


 私はクリストを連れてお師匠様のところに帰りました。お師匠様しぶーい顔をしてましたが、最後折れて、薬草学の基礎がクリストがあるって聞いて特別に弟子にしてくれましたわ。


 でもいいところの坊ちゃんのようだなって言ってました。そういえば言葉遣いは汚いですが所作はきれいですわ。


「エキゾナ、こちらがクリーという葉で、よく似てますがエキゾナが毒、クリーは根っこが風邪などの薬になりますのこう煎じて」


「なるほどいろいろ違うんだな」


 クリストがふんふんとメモを取ります。しかし年ごろの男女の話題がこれかよってお師匠様があきれてますが、弟弟子に教えるのは姉弟子の役目ですわ。


「クリストはどうして薬草師に?」


「俺、無理やり婚約者を決められそうになってさ」


「私もですわあ奇遇ですわね」


「婚約破棄されて逃げてきたご令嬢とやらがうちの兄貴と恋とやらに落ちて、今の婚約者と婚約破棄して、それと婚約するって言いだして、うちの親父が腹立てて、じゃあもう知らん、跡取りを弟にするって兄貴を縁切りしてさぁ」


「はあ」


「兄貴、婚約者がいたんだぜ? なのにさあ、バカみたいっていうか」


「うーん……」


 クリストにお鉢が回ってきて、その元婚約者と婚約させられそうになったらしいですわ。

 どうもいけ好かない女でさって言いますけど貴族のご令嬢ってそんなもんですわ。


 そういえば王太子殿下と婚約破棄した元婚約者の侯爵令嬢は隣国に逃げて、そこの王太子と幸せになったとかなんとかこうとか、まさかねえ。


「……クリストファ王太子殿下! 見つけましたぞ!」


「う、じ、じい!」


 小屋にある時、やってきたのは爺と呼ばれたおじいさん、しかしかなりの身分が上の方のようでしたわ。

 クリストが王太子って王太子って!


「じい、俺は王太子なんていやだ!」


「だめですぞ、陛下がかんかんですぞ、婚約者を決めないといけませんぞ!」


 いや爺って、じい……爺という人はテオドールさんテオとお呼びくださいですとか言われても。

 私はテオさんにお茶を出して話を聞くと……。


 クリストは隣国の王太子、つまり婚約者を押し付けられるのが嫌で逃げてきて……。

 お兄さんの元婚約者って人が大嫌いって言ってましたが……はあ。


「俺は俺は、マデリーと婚約する。婚前交渉ももうしたんだ!」


「してませんわあ!」


 いやクリスト、あなた適当に言いますけど、逃げましたわね。私は違うと頭を振ると、テオさんが興味深げにこちらを見ます。


「ふむ、子爵家の家の三番目のご令嬢は思いやりを持つ優しいお人だと」


「あのわらべ歌は冗談でお父様が作ったのですわ! だから私はやさしさって取柄じゃないですう」


 ぽんと手を一つ打って、ならマデリー様を婚約者としてご紹介いたしましょう。なら一度国にお帰りいただけますなって白いお鬚をなでるテオさん。


「……帰るだけだぞ」


「私は了承をしてませんわよ!」


 クリストが捨てられる子犬のような目でこちらを見上げ、見上げって……うう、家で飼っていたハルを思い出して、ああ、飼い犬のハルは元気ですかしら。


「……嘘でもいいのなら、絶対に婚約イコール結婚ってことにならないのなら!」


「わかりましたぞ!」


「恩に着るマデリー!」


 ああ二人に感謝されましたが、そういえばお年頃の王太子に婚約者がいないってのも変ですわ。婚約破棄が隣国でも起きていたとはと私は頭を抱えましたわ。


「……お前のところの国って王太子の婚約者が逃げ出すほどやばいのか?」


「違いますわよ」


 私は馬車の中で、クリストに説明を始めます。

 ええ、まず22年前に時の王太子が庶民の女性に恋をして、婚約破棄をする! と言って時の公爵令嬢の婚約者に殺人未遂の罪を着せて処刑したのがはじまりでしたわ。

 ええ、そこから今の陛下と王妃様の間に女好きの最低王太子といわれるバカが生まれ、そのバカの婚約者の公爵令嬢があんな馬鹿の婚約者はいやだって隣国に逃げ出し……。

 みんな首チョンの恐怖、あの王妃様が義母になる恐怖、そして浮気放題のバカ王太子の妻になる恐怖で、貴族令嬢はみな恐慌状態になり、皆が知恵を絞って逃げ出し……。

 末席の子爵の家の私たちにまで話が来て逃げ出したのですわ。


「それってやっぱりやばいじゃん」


「そうですわね」


 ああごとごと揺れる馬車の中、私は本当に婚約者ってのは形だけですわよって念を押します。

 俺はお前のこと嫌いじゃないけどなっていうクリスト、いや14歳で将来決められるのが嫌ですの。


「でも優しいってのは美徳だぜ、兄貴の元婚約者のご令嬢ってやつ高慢で俺のことバカにする嫌な奴でさ」


「マデリー様のほうが殿下の婚約者にふさわしいと思われますぞ」


 ああ、私は二人にうんうんと頷かれ、ああ、どうしようかなって思っていましたわ。

 クリストのことは嫌いではないですが、うーんミレーユどうしたらいいのでしょうか。


『どうせ婚約者なんて形だけでも決めないとだめなのですから、嫌いじゃないならお試しでもいいのではなくて?』とかあの子ならいいそうですけど……。

 薬草学の貴重な本が隣国の城にはたくさんあるぜってクリストも言ってますし、それを楽しみに行ってみますか! 私はまだ14歳、まだまだこれからですわ。クリストのお母さまは元薬草師でそれでクリストも薬草学に興味を持ったそうですしね! お話も聞いてみたいですわ。実はバルカス師匠の姉弟子だったとかいうのも興味ありますしね。

お読みいただきありがとうございました。宜しければ、☆に色塗りなど応援お願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] えっ、ここで終わるの? もう少し続きがみたいです。
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