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機械人形と生きる世界

他の誰でもない君の為に

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2021/03/29



 それは一人の少年と機械人形の話。


 ルイという名前のある彼が、機械人形と心を通わせる話。




 ふと気が付いた時、ルイは異世界にいた。

 ルイの年は十代後半、普通を絵にかいたような少年だ。


 見た目に取り立てて奇抜な点はない。

 一目見て印象に残るチャームポイントもなかった。


「ここは、どこだ?」


 ルイは戸惑いの声を上げて周囲を観察した。

 ルイが立つ場所は、見知らぬ町の中だった。

 彼の記憶の中にはない場所。


 そこに、通りかかった少女が声をかけた。


「何かお困りですか?」


 ルイと同じくらいの歳の少女だ。

 整った顔立ちの、間違いなく美人と言える少女。


「ええと、とりあえず。ここがどこなのか教えてくれると助かるかな」


 その少女は魂のない人形だった。

 そんな事を知らないルイは、人間の少女を相手にするように話しかける。


 人形の少女はアールと名乗る。

 アールは、困っていたルイに手助け。

 そして、自らが経営を手伝っている宿屋へと彼を案内した。






 それから数週間が経過した。

 ルイは、アールに紹介された宿屋で世話になりながら働いていた。


 それは住む場所を提供してもらった恩と、朝昼晩の三食を提供してもらっている恩を返す為だった。


 人当たりの良いルイは、すぐにアールと仲良くなった。


「今度の定期点検は僕もついていくよ」


 その頃になると、アールが人形だと言う事を、ルイはすでに知っていた。


 しかし、ルイは出会った頃の様に、変わらず接し続ける。

 つまり、人間にするようにアールに接し続けていた。

 だが他の者達は違う。

 アールが人間でないと知るや否や、態度を変えていた。


「どうして、貴方の態度は変わらないのですか?」


 なのでアールは不思議に思い、その理由をルイへ尋ねた。


「それは、どうしてだろうね。僕にも分からないんだよ」


 ルイは早口で答えた。その場を目撃していた他の人からは、それは何かを誤魔化すように見えたが、アールは言葉通りに受け取った。


「なるほど、不調なんですね」

「そういうわけじゃないんだけどなあ」


 そしてアールは、ルイのその症状は原因不明の何かしらの不調なのだと判断した。


 その後、ルイとアールは業務が終わった後に外出する。

 外に出て、町を歩き、目的地へ向かった。


 それは、定期点検をする為に。

 人形の医者に、だった。


 診察が終わった後に告げられたのは、部分劣化という症状だった。


 それを聞いたルイは困った。


 働いている宿の稼ぎは良くないので、新しい部品を買えなかったからだった。


「でも、このままだと君が壊れてしまう。そんな事になったら僕は悲しいよ」

「私が壊れたら、別の人形を買えばいいのでは?」


 アールの言葉を聞いたルイは怒った。

 医者の元から宿に帰るまでの間、帰り道ではルイは一言も言葉を発しなかった。





 数日後。

 ルイは宿を出て、住んでいた町を離れた。


 それは、アールの部品を買う為の資金を、稼ぐ為だった。


 深い森の中に入って行き、ルイは高価な薬草を探す。

 時間をかけてあちこちを探し回り、半日ほど過ぎた頃、目当ての薬草を見つけた。


「これで、アールが壊れずにすむんだ」


 喜び勇む様な足取りでルイは宿へと急ぐ。

 しかし、道中で不注意の為に見落としていた崖で落下してしまった。


 けれど、運が良かったのか、ルイは死ななかった。

 クッションとなる茂みに落ちたからだ。


 ルイが目を覚ましたのは、夜だった。

 彼は驚いて周囲を見回したが、暗くて何も見えなかった。


「せめて薬草だけでも……」


 そこに、アールの声が響く。

 ルイを呼ぶ声が何度も森の中に響いた。


 アールはルイを探しに来ていたのだった。

 ルイを見つけたアールは、彼の様子をみて驚いた顔になった。


「どうしてこんな危険な事を。貴方に何かあったらと思うと、私は気が気ではありませんでした」


 怒りを表明するアールにルイはにっこりと笑いかけた。


「じゃあ僕も同じだよ。アールに何かあったらと思うと気が気じゃない」

「貴方に代わりはいないんですから」

「君にも代わりなんていないよ。さあ、一緒に帰ろう」


 アールは、個体の違いについて学んだ。


 同じ姿形、同じ能力を持っていても、アールは他の者達とは違うのだと、その時、学んだのだった。


 その後は、二人で支え合って町まで帰った。

 宿で二人は、一緒に主人に怒られる事になった。






 それからもルイとアールは二人で宿で働き続けた。

 新しい部品を取り換え、休むことなく働き続けたアールは、町で一番の働き者になった。


 ルイとアールはずっと仲良く二人で一緒に過ごした。





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