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VRMMO始めてみた!

「起立、気をつけ――」


 日直の挨拶を出発の合図(ゴーサイン)とし、ボクは立ってすぐにがらがらドア目指す。気をつけなんかしている場合じゃなかったから。

 息を潜めて低姿勢で行くボクに気づくものはいないだろう。――と思ったのだけど……


「――おい、大神(おおかみ)、フライングするな」


 完璧に気配を消していたはずなのに、先生に看破され注意された。気配探知スキル高すぎ! 次いで、クラスメイトらの苦笑が場を和ます。


「めんごめんご、ごめんねぇ」


 ばれてしまったのならしょうがないと素直に謝る。


「もう、ちさとさんったら……」


 とぼとぼと席に戻ると、隣席の桜川(さくらかわ)陽芽(ひめ)ちゃんが嘆息した。

 みんなに注目されて恥ずかしかった上に、ボクが余計なことをした結果、挨拶を仕切り直すことになってしまった。とほほ……。




 改めて真っ先に教室を飛び出るボクの背中に声がかかった。


「ちーちゃんまったねー」


 その蜂蜜のように甘い声はわたしの妹分――野村(のむら)真凜(まりん)ちゃんのものだ。

 振り返ると、真凜ちゃんは女生徒にクッキーを食べさせてもらいながら、机に座っていた。足をぶらぶらさせている彼女の回りには女生徒が侍っている。

 彼女を囲っている女生徒は、家庭科部の面々だ。頭を撫でられて満更でもない笑顔を浮かべている彼女は、見事に餌付けされているようだ。

 ちなみに、ちーというのはボクのあだ名で、ボクの名前は大神ちさとだ。

 そんな真凜のハニーボイスに、


「アディオス」


 と返事をし、ボクは教室をカッコよく去った。




 ガンダ(全力疾走)で家に帰り――とはいっても電車通学なので殆ど電車移動だったけど、もどかしい思いをしながら諸々の準備を終えたボクは、目当てのブツが入った封筒をもってベッドに飛び乗り、そわそわしながらお待ちかねの開封の儀にとりかかった。


「オープン」


 といっても、封筒型なのであっという間に開けられた。

 揺さぶると、ブツがベッドに落っこちる。ブツは長方形の形をしている。面にファンタジーなイラストが描かれているそれはゲームのパッケージである。

 そうして出てきたパッケージは、新作VRMMO《突撃! ファンタジー異世界》のもの。ヘンテコなタイトルだけど、そこがいい! 抜群のセンスが光る!

 もう一秒も無駄に出来ない!

 早速、ログインした。

 すると、スタートアップ画面が現れる。キャラネームは元よりキャラクターの身長体重などの細かい部分も既に考えてあるのですぐに終わった。

 キャラクター名は、ボクは大神だから、ふぇんりる。

 種族はヒューマン。職業はアーチャー、カッコいいから! それに前線に出なくて済むし。

 そしてステ振りはアーチャーとしてはやっぱり命中率大事だからDEXを高めにして、クリティカルの為にLUKも上げとこ、余ったポイントはSTRに振っとけば完璧なはず。

 性別は固定だ。TSプレイは出来ない仕様になっている。

 身長体重体型は現実のボクに準拠している為、秘密。以上!

 確認を終えると、転送された。




 転送先は、町中だった。どうやらここが最初の町セルベンみたいだ。


「うっわぁ……」


 思わず、声を漏らしてしまう。

 なんちゅう混雑具合だ。早々、人の多さに辟易した。満員電車を彷彿とさせるぎゅうぎゅう具合だ。

 もうこんなにインしている人いるよ……。

 平日発売だったので、学校から帰ってきて早々にインしたのだけど……

 何処を見ても、人、人、人。賑わうのはいいけれど、身動きが取りづらいのは困る。

 まあ……サービス初日だからこんなもんか。

 ボクは人混みを掻き分けるように進む。目指すは道具屋。武器は初期装備で良いとして、何か有用なアイテムがあるかもしれないから。

 そうして道具屋を目指し進んでいると、焼きたてのパンのいい香りがする。

 誘惑に一発KOされたボクは、パン屋に入った。ボクと同じように誘惑されたのだろう、プレイヤーが結構いる。

 並ぶパンはめちゃ美味しそうだった。こんなの買うっきゃない!

 ステータスに僅かでも補正が入るらしいから(30分間だけ)これは無駄遣いではない! と誰にともなく言い訳して、クリームパンを購入した。

 お店近くのベンチに座って食べたクリームパンは、美味しいし、その上VRだから太らないし、最高だった!

 ボクが幸福感に浸っていると、隣から声をかけられた。


「あのう、ここにクリームが」


「んぅ?」


 お姉さんの示す通り、触ってみると、確かに付いてた。

 そうして指に付着したクリームをぺろり。甘い。


「センキュー、マドモアゼル。グッバイ、よい旅を」


 教えてくれたお姉さんにカッコよくキメながらお礼を言って、ボクは華麗にその場を後にした。親切な人もいるんだなーしみじみ。

 予定外の出費もあったが満足のいくものだったのでよしとしよう。などと考えていると、道具屋に着いた。

 早速中に入ったボクは、目に入った釣竿を手に取った。

 ちなみに、ボクは、泳げない――じゃなかった。釣りとか生活系コンテンツと呼ばれるものが大好きだったりする。

 ちょっとボロいけど、まあいっか。

 後は……とりあえず薬草も買っとこう。

 よし。

 道具屋を出たボクは、買った薬草を味見の為にむしゃむしゃしながら、進む。うん、なかなかに美味しい。

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