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目を覚ますと、隣に男が寝ていた。

作者: 鷹羽飛鳥

 「目が覚めたら、彼女は消えていた。」とペアになる女性視点です。

 「ん…」


 カーテン越しの光で目が覚めた。4月とはいっても、まだまだ暖房なしでは肌寒い。

 引っ越してきたばかりの、まだ見慣れない天井が見える。えっと、今日は何するんだっけ? 荷解きの続き、だっけ。

 布団の温かさがあたしを離してくれない。なんかいい匂いもするし、いつにも増して布団から出る気に…布団? あたし、ベッド使ってるはずだよね?

 急速に覚醒していく。天井っていうか、部屋の感じは同じなのに、家具がある。なんか生活感も。なんで!?

 右側が妙に温かくて、恐る恐る見てみると、男が寝てた。心臓が止まるかと思った。


 オーケー、少し落ち着こう。夕べ何があった?

 引越荷物の搬入が終わって、ベッドだけ使える状態にして、夕飯どうしようなんて思って外に出て、近場のスーパーとかコンビニとかを見て歩いて、まぁ、疲れたし引越初日だし、ちょっとリッチに外食でもしようかなんて考えてたら、チャラい連中にナンパされて。

 キレそうになった時に助けてくれた兄ちゃんがいたんだっけ。……隣で寝てる男(こいつ)だ。

 助けてくれてありがとー、キミ、学生? 2年か~、なんて話しながらレストランでご飯食べて、まぁまぁ、助けてもらったお礼にお姉さん奢っちゃうよ~とか言って。

 あっちはまだ未成年だからって、生ジュースなんか飲んでたけど、あたしはグラスワインを何杯か飲んで。

 で、ここに至る。……何があった?




 服…着てる……着てるっていうのか、これ? かろうじてパンツだけはいてる。

 んっと、…あ~、これは、ちょっと迂闊だったかも。やっちゃったよね、これは。

 起こさないよう、なるべく音を立てないように布団から這い出して。静かに手早く服を着る。スマホで位置情報を見ると、どうやらあたしんちのすぐ近くらしい。なら、この崩れかけた化粧を直さず出ても大丈夫かな。

 ドアの開閉音もなるべく抑えて…なんか泥棒にでもなった気分だよ。

 ん~、コンタクト着けたまま寝ちゃったから、目が痛い。今日はさっさと外して目を休めなきゃ。ま、今日は荷解(にとき)だし、眼鏡でいいか。

 外に出て、ドアを閉めて、エレベーターまで行ってはっきりした。ここ、あたしと同じマンションだ。道理でレイアウトが一緒なわけだ。

 206…って、あたしの部屋の真下じゃないの。夕べはそんなことも気付かないほど酔ってたのかぁ。

 商売柄、あんまりみっともないところは見せられないから、普段は気を張ってるんだけどなぁ。あの兄ちゃん、警戒心抱かせないタイプだったみたいだね。

 とにかく、誰かに見られないうちに部屋に帰ろう。






 「ふう」


 部屋に戻った後、ちゃんと化粧落としてコンタクト外して、お風呂に浸かってる。

 う~~ん、やっぱり目がヒリヒリするよ。一応、たっぷり目薬さして水分補給させてから、外したんだけどなぁ。ワンデータイプでよかった。

 それにしてもあの兄ちゃん、大学生のくせにワンルームマンションかぁ。自分が住んでなかったら、セレブだと思っちゃうとこだ。ここ、意外とリーズナブルなんだよね。なんせ社会人3年生のあたしが住めるくらいだし。

 兄ちゃん…名前なんだっけ。聞いたんだけどなぁ。大学2年で未成年ってことは、19だよね。ナンパから助けてくれた時は王子様って感じだったし、体格からしても、なにか運動やってんだろうけど、食事の時はなんか遠慮しちゃったりして可愛くて。だから、体許しちゃったんだろうなぁ。なんせ全然後悔してないもの。

 後悔してるのは、焦って帰ってきちゃったことの方。いきなりこんな始まり方でなければ、ちゃんとしたお付き合いに発展する目もあったんだろうに。惜しいことをした。ま、19と25じゃ、どのみち難しいかもね。


 休日のあたしは、仕事モードの時とは全く違うから、そこらでうっかり会ってもわかんないだろうし、いいよね、正体不明で。

 ま、部屋はわかってんだから、いざとなったら押し掛けられるしね。……押し掛ける気、あるんだね、あたし。そっか。

 よく覚えてないってのがアレだけど、飲んでるうちになんとなくいい感じになって部屋に押し掛けたってとこか。どうして部屋に行ったのかがはっきりしないんだけど、でも、飲んでて、このまま別れるのやだなって思ったのは間違いない。

 うん。抱かれたことに後悔はない。ないんだけど。あたし逃げてきちゃったじゃん。

 今更、名乗りあって、お付き合いしませんかなんて、どの面下げて言やいいのよ。


 あ~、失敗したなぁ。

 19の大学生に、25のあたしが熱上げんのもアレなんだけどさ。

 少し、好きになっちゃってるよね、これは。

 偶然また会ったりしたら…って、偶然もなにも、同じマンションだって。






 あれから3日間、エントランスでキョロキョロしたり、思いっきり不審人物になってしまったけど、彼と会うことはなかった。

 さ、今日からは本格的にお仕事! や、昨日までも仕事はしてたんだけどさ。昨日までは春休みだったからね。今日から新学期、初めての担任だ。

 カチッとしたパンツスーツに、教育ママな眼鏡をかけて。戦闘スタイルはバッチリだ。


 始業式で赴任の挨拶をした後、ホームルーム。あたしの受け持ちは2年3組。

 生意気盛りの高校生に舐められないように気合いを入れて。

 …って!

 あそこにいるの、彼じゃない!? え、なに!? 2年って、高校2年だったの!? あたし、自分の生徒、好きになっちゃったわけ!?

 それって、失恋確定じゃん! そんなぁ…。

 これは、“一切名前の出てこない”お話として書いた実験作です。

 主人公は、16歳の少年とことに及んでしまったわけですが、一般的に育成条例は、“18歳未満であることを知っていた”ことが重要で、主人公は「学生さん?」と聞いて「2年」と帰ってきたことから、大学2年と信じていたので、セーフです。大学2年の4月では、現役合格だと19歳なので、未成年なのです。

 「学生」は大学生を指す言葉で、高校生は「生徒」ですから。


 男の子視点で「目が覚めたら、彼女は消えていた。」もありますので、そちらも併せてどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先生やってしまいましたねぇ。 受け持ちの生徒とはいえ、同じマンション何があるかわかりませんよね。 知ってたらアウトか!
2021/08/28 03:01 退会済み
管理
[良い点] いいかんじに好きな作品です。 うーん。いい。
[良い点] ナイショの結婚生活の逆バージョンになりそうな展開ですね! 体を許しちゃった(?)ということはそれなりの男だったわけで、相手もまんざらでなかったら禁断の恋が始まる予感……! 初っ端から度肝…
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