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1.私は結婚するらしい
「誓いますか?」
いったい何を誓うんだっけ。
「チドリ ミサキ様」
名前を呼ばれ意識が引き戻された。
「…誓います」
ああ。
私は結婚式をしている最中だった。
「では、誓いを」
薄いベールで覆われた視界は、私を隠してくれる。守っていてくれる気がして、それを壊されたくないなと、ぼんやり思っていたら右手に誰かが触れた感覚と同時に周囲からザワリとした声がした。
長すぎるベールから、誰かが私の手にキスをしたらしいのが見えた。
ああ、私の旦那さんか。
私は、今、異世界で結婚したんだ。
──顔も知らない人と。