おばあちゃん
バス道を曲がると、
あっという間に真っ暗になる。
生きている闇だ。
山に向かって畑を通って私は家に帰る。
小さい頃、
友だちの祖母を、おばあちゃん、と呼んでいた。
今も、おばあちゃん、と呼びかける。
同じ顔で仙人のように年をとらない。
ある日ほろりと欠けていくだけだ。
この闇が生きているのか
沈んでいるのか
私には分からなくなっている。
帰郷のたびごとに。
目を閉じれば、カエルが鳴いている。
日が昇れば、田んぼがひかる。
もうすぐ生まれた家に着く。
そうだろうか。
人間の気配は薄い。
この闇のにおいはもっと濃い。
いつか家を、村を喰らっていくだろう。
ただいま、おかえり、当たり前に返してくれた人を探し
溶けた人影を探し
あたたかい闇の中にすっぽりと入る。