ドロねずみのダンス
Bill Evans - Portrait in Jazz (1960 Album)
を聴きながら
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ドロねずみのダンス
しずみこんで、しずみこんで そのうち。 そのうち、安い赤ワインの海に思考が溺れるような気がして、そうしてやっぱり 理解する 私は本当に言葉のキャッチボールがへたくそだって
聞きたいことなんて、いっぱいあるよ。しりたいことだって、いっぱいあるよ。でも全然できない 言葉になっていかないの。全部が飽和状態。
――だって、数文字みれば、……なんとなく わかるんだもの。聞かなくともわかる。気がしてしまうから、……結局、いいたいことだけになって
――なにも聞けないまま
面白くもない私の近況なんて話して馬鹿じゃない? 言ってしまってから後悔。自己嫌悪。
――【自己嫌悪するくらいなら言わなければよいじゃない】
――『だって、瞬間 うれしくなるのだもの 仕方ないよ』
――【いやいや、相手方だって、話しかけられてるから仕方なく返してるのに その上 興味のない人の近況なんてつまらないだけでしょ?本当に駄目駄目ね あなた?】
無意識の自分の方が大人ってどういうことだろう 全てが飽和状態 沈み込んだ結果 更にぐだぐだなんて馬鹿じゃない?言葉のキャッチボールひとつうまく出来ないなんて、本当に人のできそこない。もう嫌だ。
今日で人間やめます?
そんな風にドロねずみが蝶ネクタイして 私の前にグラスを差し出すの。
――【まぁ、ありがとう。ドロねずみさん。あなたのお名前は何かしら?】
――『お好きに呼んで下さいな。それより、一緒にのみましょう』
――【まぁ、よい夜ね!私、今日で人間やめれるような気がするわ。たった今から、ドロねずみになろうかしら?】
――『ほっほー。それはまた乙なことで。我らドロねずみ 人間様は好きにゃなれないが、同じドロねずみとあれば話が別でっせ。一緒に朝まで飲み明かしましょう!』
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月に隠れた雲の向こうで青白く照らされた雲がやわらかくカクレンボ してるわ。
そんな怪しい夜に。シルエットはドロねずみで。
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