全能の逆説の論破
全能の逆説という有名なパラドックスがある。全知全能の存在を否定するパラドックスである。
曰く、全能者は重くて絶対に持ち上げられない岩を創造出来るか?
曰く、全能者は自らの能力に制限を設け、全能でなくする事は出来るか?
この二つの問いである。意味が理解出来ない者も多い事だろう。私も最初は理解出来なかった。
・・・つまり、持ち上げられない岩を創造出来るなら、持ち上げられない岩を創造した瞬間に全能では無くなる。創造出来ないなら、出来ないので当然全能では無くなる。
自ら全能で無くなる事が出来るなら、それをした瞬間全能では無くなり、出来ないならやはりそれも全能では無い。
要は、どちらにしろ矛盾が生じるのだ。何せ、どちらにしろ出来ないのだから。
それでも、全能者ならその矛盾すらどうとでも出来ると無理矢理押し通れば、それこそ理論がガラクタになるだろう。四角い丸の様な矛盾した概念である。
果たして、このパラドックスを解決する方法などあるのか?・・・実は、一つだけあるのです。それも、今や子供でも知っている身近な理論で。
それこそがパラレルワールド理論である。
パラレルワールドとは、こうあったかも知れないという可能性により、世界が分岐する理論の事だ。
つまり右を選んだ、左を選んだ、はいを選んだ、いいえを選んだ、或いは何も選ばなかった。そんなもしもにより枝分かれした世界をパラレルワールドと言う。
さて、それではこのパラレルワールドと全能の逆説とどう関係してくるのか?それこそが今回の重要な鍵となるだろう。
つまり、世界そのものを二つの可能性に分岐させれば良いのです。
持ち上げられない岩を創造した世界、創造しなかった世界。自ら全能性を失った世界とそうでない世界。
その二つの世界を同時に観測すれば、全能性は証明される。
つまり、二つの可能性の中の自分を自己観測する訳だ。四角い丸という矛盾した概念も、その点で見れば不可能ではないだろう。
箱の中の猫の様な物である。
こうして、簡単に全能の逆説は完全に論破される。
では、ありがとうございました。