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エピローグ

 エピローグです。


 亡くなったと思ったら、女主人公のりつは土方鈴として再度、ヴェルダン要塞近郊の民宿で目覚めます。

「殺してやる。彼もお前も」

 澪の怒声が私の目を覚まさせた。

 寝ぼけ眼で私は起き上がり、周囲を見回したら、ジャンヌと澪が対峙しているのが、目に入ってきた。


「もう、夢で見たと割り切りましょう」

 ジャンヌは、余裕綽々の表情を浮かべ、幸せそうな顔をしている。

「そうよ。夢だったのよ。そう割り切って」

 愛が二人の間に割って入って、懸命に二人の喧嘩を抑えようとしている。


 私が起き上がったのに気づいた愛は、私に声を掛けた。

「お願い。澪に当身を食らわせて気を失わせて。このままじゃ私達の秘密がバレる」

「分かったわ」

 取りあえず、それが賢明な状況だと判断した私は、澪に天然理心流の柔術を使った当身を食らわせ、澪を失神させた。


「一体、何があったの?」

 私は失神した澪をベッドに寝かせ、ジャンヌと愛の二人から事情を聴こうとした。

「あれ?鈴はいなかったの」

「そう言えば、微妙に雰囲気が違っていたわね」

 ジャンヌと愛は、顔を見合わせて言った。

 事情が私には、さっぱり分からない。


 ジャンヌと愛の話によると、ジャンヌ、愛、澪の3人は、ヴェルダン要塞攻防戦で彼が戦死しなかった世界に行っていたということだ。

 3人共、微妙に時期がずれているかもしれないが、1916年秋頃、幸恵と千恵子が産まれ、総司とアランが胎児だった頃に戻っていたらしい。

 そして、ヴェルダン要塞攻防戦を生き延びた彼は、欧州を日本海兵隊士官として転戦し、第一次世界大戦終結を迎えたのだが。


「その直後に、ジャンヌと彼が駆け落ちして、フランス外人部隊に入った?!」

 私は大声を挙げそうになり、慌てて自分の口を塞いだ。

「全くなんでそうなったのか。あの世界の彼に聞かないと分からないけどね」

 愛はそうぼやいた。

「私との真実の愛に、彼は目覚めてくれたのよ」

 ジャンヌは夢見るように言った。

 それは、澪じゃなかった忠子が激怒して当然だ。


 その後だが、ジャンヌと愛の代わる代わるの説明によると。

 忠子は私と手を組んで、彼に日本へ帰国するように呼び掛けたが、彼は無視して、離婚したいと言った。

 とは言え、彼が私達に全く冷たかった訳ではなく、村山キクが産んだ幸恵を我が子だと認知したし、幸恵、千恵子、総司に対して養育費を20歳になるまで払い続けた。

 また、最後まで離婚に応じなかった忠子にも、50年に渡り、婚姻費用を送り続けたらしい。


 一方、彼とジャンヌは、50年に渡り、同居して事実婚生活を送った。

 アランを始め12人の子宝に恵まれ、忠子の為に結婚こそできなかったが、彼はフランスに帰化し、フランス陸軍の正規の軍人になり、最終的に将軍になって退役した。

 彼の死後、遺産の4割がジャンヌとアラン達に、4割が忠子と総司に、1割が幸恵に、1割が千恵子に分割して相続されたらしい。

 そして、異世界で自分達が亡くなったと思ったら、この世界で目が覚めた、という訳だった。


 一通りの話を聞き終えた後、私は酷い頭痛がしてならなかった。

 単なる夢の方がまだマシだ。

 50年も異世界で過ごして、元の世界に戻るなんて。


「それにしても、鈴はどうしていたの?」

 愛の問いかけに、私は取りあえず誤魔化すことにした。

「私は夢も見ずに朝まで寝ていただけよ」

 異世界で50年も彼を独占していた、と愛とジャンヌ、それに澪に私が言ったら、血の雨が降りそうだ。

「そうなの」

「そうだったのね、それにしても何で鈴だけ」

 ジャンヌと愛は不思議そうだったが、それ以上の追及はしてこなかった。


 暫く経って頭痛が収まった私は、前を向くことにした。

 そう、この体は10代前半なのだ。

 この体で落ち込んでなどいられない。

 今度こそ、本当の家族を彼と作れるように努力しよう。

 そう私は自分を励ました。

 ちなみに、他の3人、澪、愛、ジャンヌがどうしていたかですが、「私の大事な人、ユーグ・ダヴー」の世界に行っていました。

 他の3人は、単にヴェルダン要塞攻防戦で「彼」が死ななかった世界に行くことを望んだからです。

 その世界では、上記のような修羅場が演じられたということで。


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