【ノックアウト】
それからというもの、挑戦するまでもなく敗れたこの気持ちをどこに持っていけば良いのかと、やりきれない日々が無情にも過ぎ去っていった。
俺にとって今までの恋愛では味わったことのない、
頑張る前に出鼻をくじかれた敗北感と諦めきれない気持ちが交差していた。
そうゆう俺の状況を当然何も知らない桜井さんは、
1人の男の心を狂わせるには充分すぎるほどの破壊力満点の超キュートスマイルで話しかけてくる。
「黒川くんって、下の名前、湊くんだっけ?」
「ああ、そうだけど、、」
「へぇ〜かっこいいね。
じゃあ、今度から湊くんって呼んじゃおっかな?笑
かわりに私のことは梨奈って呼んで?」
そうである。
俺には分かる。
わかる人には分かる。
彼女は男心をくすぐるテクニックを意図せず天性のスキルとして持ち合わせているのである。
このような事をこの笑顔で急に言われると恋愛経験の少ない男子諸君ならばイチコロだろう。
よく人は彼女ような女性を『あざとい女性』と言ったりするが、彼女はそれを、意図せずやっているぶん余計にタチが悪いのである。
超可愛いのである。
そして彼女の、ノーガードの俺への攻撃はまだ続く。
「じゃあ湊くんさ、line教えてよ。」
「あっ、は、はい!了解です。」
「なんで敬語なの?笑
それと早く梨奈って下の名前で呼んでよ。笑」
「あっ、ごめん。笑
.........梨奈。」
「めっちゃ照れてんじゃん。笑
かわいいね。笑」
「う、うるせーー!笑」
「あっ怒った?笑
でも、せっかく私は湊くんって呼んでるのに
湊くんも
梨奈って呼んでくれないとヤだよ?」
「わかったよ!!笑
梨奈。」
「はい、また照れたー 笑」
「そんなこと言うから呼びにくいんじゃねーかよ。笑」
「あっ、そっか!笑 ごめん。ごめん。笑」
そんなこんなで俺は抵抗する間も無くすぐさま彼女の魅力にノックアウトしてしまった。
ドクターストップも間に合わずといった、完全敗北である。