【ファーストコンタクト】
入社式も難なく終わり、数日が過ぎ
俺はふと一息をついていた。
しかし、それもつかの間、
新卒生には山ほどやる事があるのだ。
そう、
これもまた恒例、同期同士の交流を深めるためのレクリエーションを行うという。
俺は素直に思った。
チャンス。ここで一気に距離を縮めてやろうと。
この公的に与えられた願っても無い機会を利用しない手はない。
俺たちの年は俺も含め7人の同期がいた。男3、女4というまあまあバランスのとれた布陣だ。
改めて同期同士2人1組で自己紹介をするという。
俺は真っ先に桜井さんの元へ向かった。
「あっ。桜井さん!あのー僕と...」
次の瞬間それを遮るように1人の女が俺と桜井さんの中に入って来た。
「黒川、桜井さん!あのー、私、1人だけ余っちゃうから3人でやらない?」
声だけで分かる。この無駄に落ち着き過ぎてるトーンは若林結花だ。
こいつとは実は専門学校の時からの同級生で就職先も同じという腐れ縁だ。
「あっ。是非お願いします。ねっ?黒川くん。」
「そ、そうだね!さ、3人でやろう。3人で!!是非。。。」
と、まあ、俺と桜井さんのファーストコンタクトはこんな感じで若林のやつに邪魔されてしまったのだが、
もう。そんな事すらどうでもよかった。
なんせ、
桜井さんが俺の名前を覚えててくれたのだから。