6 高性能で人助けしましょう
・あらすじ、読者の皆様は安全運転を!
今俺は、ようやく道らしい道を走ることが出来て少しホッとしている
森を抜けた時に、T字路を逆方向[┻]から入ることになると思わなかったが、道っていうのはどこかに繋がっているという安心感がある
エナがいうには、このT字路の道すべて他の村にも繋がっているそうだが今進んでいるこの真っ直ぐ北へ進んだ所にある町が一番近いらしい
「エナ、後どれくらいの時間で町に着く?けっこうお腹減ってきた」
「この速度で行くと20分ほどで目的地に着くと思われ…ん?」
「どうした?」
「マスター、この道の先に多くの魔物の反応があります」
先ほど森で起こした事故を思い出し少し嫌になる
「エナ、迂回出来ないか?」
「出来ないことはないですが、魔物の他に人の反応があります…少しピンチみたいですね」
…そんな情報もらったたら行かなきゃならんでしょうが、人として…
「その前にに確認、その魔物強い?」
「反応からするとゴブリンより少し強いくらいでしょうか?、でも数が多いです」
仮にゴブリンがいっぱいいたとしよう、先ほどの事故…戦闘のように先制攻撃してクラクションをめっちゃ鳴らす、追い払うくらいなら出来るかな…
さっき考えてた安全運転宣言が早くも達成出来そうにない
「よし、助けに向かう、ぶつかって全力でクラクション鳴らそう」
「マスター、私もそれをオススメします、前にも言いましたがクラクションは相手に恐怖心を植え付けるというスキルが付いてて効果的です」
何それ怖い…けど頼もしい
俺はアクセルを深く踏み込みその現場へと向かう
しばらく道なりに進み見えてきたのは、四台の荷馬車と人、それを囲む多くの赤い狼?
ピロン♪
ナビの画面に狼?の鑑定結果が出て説明を読む
名前はレッドウルフ
[集団での狩りを得意とする狼型の魔物、赤黒い毛と狼に比べ大きく発達した身体、牙、爪などが特徴、動物としての狼と大きく区別されてる点は魔物の特徴である赤い目であること、進化する事、体内にある魔石などが上げられる]
正に今現在レッドウルフは集団で狩りをしている真っ最中というわけだ
逆に荷馬車と人の方はというと、剣や杖を持った護衛?らしき人達 五人が金髪のベテラン冒険者風の人を中心にバッサバッサとレッドウルフをかなりの数を倒している…ただ数が数だけに防戦一方…
さらにその五人の後ろには怪我をした人達や車輪が外れぼろぼろになった荷車などがあり、それを庇うように戦っているのが状況を悪くしているみたいだ…エナのいった通りピンチな状況のようだ
「マスター、作戦はさっきと一緒です、認識外からの先制攻撃がオススメです、先にクラクションを鳴らすと敵に認識されます、一度認識されると〈認識阻害〉の効果がしばらく無くなります」
そんな説明を受けながらレッドウルフとの距離を猛スピードで積めていく
先制攻撃をぶつける相手は護衛の反対側から非戦闘員を狙う卑怯なヤツ二頭
「今!」
そのレッドウルフ二頭が非戦闘員に向かって大きな牙を光らせて命を狩り取ろうと駆け出す 、そのほぼ同じタイミングで俺はウルフに突っ込む
ドン、ドンと二度衝撃がハンドルを伝う
その鈍い衝突音が響くと同時にほかのレッドウルフや人の視線がこの車に集まる
「さらに今!」
プァーーーーーーーーー
力強く押したクラクションが辺り一帯に鳴り響く
その音を聞いたレッドウルフ達は身体一瞬を大きくビクつかせた後、道脇の森へと逃げていく
いやーまさにシナリオ通りとはこのこと、ここまで上手くいくとは、高性能な愛車エナ様々だ
レッドウルフから人を救い、まるで物語のヒーローになったかのようで俺のテンションが上がる
さて、ここで俺がかっこよくヒーローぽい言葉を一言を…言おうとしました…すいません
かっこいい言葉を掛けようと荷馬車付近の人達を見ると青い顔で身体を震わせまる、まるで死神でも見てるような恐怖を宿した目でこちらを見つめる…
護衛の人達は脂汗を滲ませながら必死に後ろの人達を守ろうと剣や盾を構える…
「マスター、このクラクションは乗ってる人以外、音を聞いたモノ全てに恐怖心を植え付ける〈クラクション(恐怖付与)〉です…」
うん、だよねー…
今の俺達は、気配無くいきなり現れた正体不明の何かで、二頭の魔物をあっさり殺し大きな音と共に恐怖を振り撒くそんな存在…
ヒーローっていうか悪役に近いんじゃないかこれ?
「エナ様、皆様の恐怖心はどうやったら無くなるのか教えろください御願いします」
「この車のシートに座った人を癒す能力〈高性能シート(回復付与)〉・ヒーラーの精神異常の回復魔法・時間経過による自然治癒の3つです、恐怖の元凶に乗る人は多分いませんし…、護衛のヒーラーはどうやら恐怖で正常な判断が出来てないようです…、つまり今は時間の経過しか無いかと…時間にして約5分でしょうか?」
5分……長いな、とりあえず今は少しでも早く皆様の恐怖を和らげないといけない
ウィーン
電動の窓を下げて俺は顔を出す、ただそれだけの動作に回りは異常にびくびくする…
「怖がらせてしまい、本当にすいませんでした」
素直に謝罪、とりあえず謝罪、全力で謝罪、小粋なジョークなんて出てくる訳がない
こうして俺の異世界の人との最初の交流の言葉はあいさつや何気無い会話ではなく全力の謝罪で幕を開けた