お茶の時間で神話談義。
神話について、精霊王ってどんなの、って話。
次話を12時に投稿します。
殿下とエリューシャ様と同じ席についております。違和感しかねぇ……。
「……さて、なにから話そうかね?」
「神話についてまだ聞きたい事があるわ。」
「ならそれでいこう。」
……私は神殿の者ではないのですがね。
「さっきの話聞いてて思ったんだけど、神話って精霊王とか精霊神の話がメインなの?他の話も聞いたことあるけど。」
「はい、神話は精霊王と精霊神の話だけはなく、」他の神を主軸にした話もございます。また、地上の生物や人間にまつわる話もありますね。」
「そうなんだ。」
「神話全体として、かなり詳細にその時の状況が書かれた部分もありまして。神話は実は、この世界が辿ってきた歴史なのではないか、という説もありまして。神殿内では今の所この説が最有力です。それを裏付けるような遺跡なども残っております。」
なんでも神殿は今、精霊王の門探しに躍起になっているとか。
「あ、それ聞いたことある。神話が歴史書だって話。」
「ああ、私もあるぞ。魔獣のせいで進まんらしいが。」
「魔族領にも遺跡があるとか。」
「そうなのか。ふむ……。」
土地柄見つけづらいでしょうが。
「それはそうと、精霊王とかって名前あるのかしら。精霊王、とか精霊神、とかでしか聞いたことないわ。」
「名前、ですか。」
「たしかに。役職名だしな。」
……名前。
「ええと……。たしか名前はあった筈です。ですが、神話を記した物が何分古く……名前が解読出来ない、その頁が破れている、等で分からないものが多いというのが神殿関係者の話です。」
「そうなんだ。判っているものはあるの?」
「そうですね……。たしか、精霊王の四つある顔の内の二つ、精霊神の三つある顔の内の一つ、地上の話で精霊王に鍛えられた世界を救うもの、そして魔獣を率いた個体の名前ですね。あとは私にはなんとも。」
後は神殿関係者に聞いてください。
「ふーん。精霊王の顔の名前は?」
「精霊王の何かと冷徹を司る青のシエル、教導と何かを司る白のソレル、ですね。」
「精霊王自体の名前はわかってないのか?」
「……名前の一部のみしか。」
…ィ………ーデ、という感じ。
「そうなのか……。」
「司るものは判っているようですが。」
精霊王、絶園、黒の…ィ………ーデ。絶園が何かははっきりと判っていないが、精霊王の創り出した世界の事なのではないか、という話。
「絶園、ね。」
門を見つけられれば色々わかるかもしれませんね。
「他の判っている名前を教えてくれ。」
「はい、精霊神の顔の一つは正義のフィブラーシュ、地上の世界を救うものはエイグラム、魔獣を率いるものはシェイドクイン・レプリエイラですね。シェイドクインは役職名なのではないか、という話です。」
レプリエイラ、が名前になるんですかね。
「ふむ、なるほどな。フィブラーシュはわかる。騎士達が信仰しているからな。」
「光と正義のフィブラーシュ、だったわね。」
「はい。神話においても地上で起こった戦いで、守る側に精霊神がフィブラーシュとして降臨する場面がいくつかありますね。大抵、神話で正義として書かれている側でもございます。」
もっとも、精霊神から見た正義ですが。
「……正義ってなんなのかしらね。」
「己の信ずるものが正義だろうよ。」
「……。」
この話は嫌いだ。
「正義、が嫌いなのか?」
「……いえ、正義というのは戦いの一側面でしかないかと。」
「というと?」
「…………見方を変えればそれは悪ともなります。」
勝者の綺麗事でもある。
「ふむ。」
「この話については御容赦願います。」
「わかった。」
ふぅ。
気付けばエリューシャ様がこちらをじっと見つめていた。
「なんでもないわ。」
……探られたかな。
「それはそうと、精霊王って地上によく来るんでしょ?」
「はい、神話では地上へ来る回数がかなり多いですね。」
ただナカゴが食べたいだけで来る話も。
「今も地上の何処かにいるのかしら。」
「どうなんだろうね。いるかもしれない。」
「可能性としては高いかもしれませんね。」
後から思い出して精霊王だったんじゃないか、という話は今でもある。
「今でもそういう話があるのね。」
「もしかしたら何処かで出会えるかもしれないな。」
「すでに会っているかもしれませんね。」
それがありえるのが精霊王クオリティ。
「精霊王って見分けられたらいいのにね。」
「ナカゴでも渡してみるとかどうだ。」
「……常に持ち歩くのは大変かと。」
「なら他にないのかしら。」
「そうですね……。」
なにかあるか。
「……精霊王の目は赤い、という話があった記憶があります。」
「赤い目か……。」
「あとは……精霊王は四色に書かれておりますね、説では外見、髪の色、と。」
「黒、青、白か。あと一つはなんだ?」
「えーっと……赤ですね。」
統べる絶園の黒、…と冷徹の青、…と……の赤、教導と……の白。
「赤は全然判ってないのね。」
「はい。度々出てきている筈なのですが。」
レプリエイラを創り出したのも赤だった筈。
「世界を滅ぼしかけた時も赤じゃなかったか?」
「赤い精霊王はとてつもなく危険、って話は聞いたことあるかも。」
「破壊だとかそういった事を司っているのかもしれないな。」
「ありえそうですね。」
「解読する人には頑張ってもらいたいわね。」
今後に期待、と。
正義では守れないものもある。(レーネ談)